教授に聞いてみた

生命科学科学生が教授に聞いてみた

研究者になろうと思ったきっかけは何ですか。
きっかけは、、、今となってははっきりしません。しかし、窮屈な学校生活を苦痛に感じていた子供時代に、様々な物語の中で権威・権力や不条理に立ち向かう科学者や医師に素朴に憧れていたことは、今の自分につながっているような気がします。ジュール・ヴェルヌ (バック・トゥ・ザ・フューチャーのドクのお気に入りですね) の「海底二万海里」のアロナクス教授やネモ艦長、「神秘の島」のスミス技師、ヒュー・ロフティングのドリトル先生は、学校が大嫌いな子供だった私 (学校嫌いは今も変わらないけれど) のヒーローでした。
今の分野の研究に携わろうと思ったきっかけはなんですか
私は現在、海馬の基礎研究していますが、特に深い理由はありません (人生の選択には、「なんとなく」ということの方が多いのではないでしょうか?)。ただ、振り返ってみると、脳や心について知りたいというプリミティブな思いは、谷崎潤一郎や川端康成、三島由紀夫らの小説をイキって読み漁っていた大学時代に強まっていたようです。だとすれば、三島由紀夫の「音楽」や川端康成の「たんぽぽ」を読み、精神医学に「なんとなく」惹かれたことは、今の研究に携わることになるきっかけの一つと言えるかもしれません。
医学系の勉強をしてからの研究と生物系や理学部系の勉強をしてから研究をすることのメリット、デメリット
私は生物系や理学部系の勉強をした経験がなく、医学系と単純に比較することは出来ません。とはいえ、自然科学としての考え方は医学系も生物系・理学系も概ね共通しており、どの学科でも対象を細分化・分析して理解する還元主義的な研究方法について勉強するはずです。ただし、人間について徹底的に学ぶのは医学部だけではないかと思います。人間は細分化・分析するだけでは必ずしも理解できず、「丸ごと」その人の物語に耳を傾けることも必要です。メリット・デメリットではなく、何について勉強したいか、ということでしょう。
研究者の1日のスケジュールについて教えてください
日によって違いますが、8月某日はこんな感じでした。午前7時半頃にラボに到着し、スケジュールの確認やメールのチェックを行います。8時半頃からは、ラボに出て来るスタッフと簡単にその日の打ち合わせをします。9時頃から自分の仕事に取り掛かり、論文の執筆をしたり、講義や実習の準備をしたり、実験データの確認や依頼された原稿の執筆をしたりして過ごします。途中で休憩を取りながら、ラボのスタッフや関係者からのコンサルテーションに対応し、午後8時半頃にラボを出ます (働き方改革?)。
留学は必要だと思いますか
私はイギリスのオックスフォード大学で1年半、ポスドクとして働きました。ラボヘッドは厳しいことで有名なハンガリー人で、「日本人は一日24時間働くんだろう?」言われた時には、「それは栄養ドリンクのCMですが?」と頭を抱えました。苦労もありましたが、自分がラボヘッドになってからは、そこでの経験が活きました。また、各国から集ったポスドクや学生との「密」な交流によって現代世界に対する理解が深まりました。必要かどうかではなく、本田宗一郎氏の言う通り、「人生に無駄なことはない」、ということだと思います。
医学の研究と臨床について
質問の意味は、(基礎医学) 研究と臨床 (医学) について、ということでしょうか?基礎医学は自然科学の一領域であり、動機づけは研究者の個人的な「好奇心」によるものです。その目的は真理の探求にあり、成果の活用は必ずしも求められません。一方、臨床医学は実学の要素が強く、成果を患者に還元することが求められ、利他的な行動原理があります。生命科学科は臨床医学も学びますが、私も両方の立場に身を置いています。基礎と臨床という二つの視点からの批判的思考があることは、物事の理解を少しだけ変えてくれるはずです。
研究者になろうと思ったきっかけは何ですか。
はっきりしないのですが、自分が好きで得意なことをしていたらいつのまにかなっていた、というのが正確だと思います。受験プレッシャーのない田舎でのんびり育ったので、決断の基準が定量指標ではなく希望に偏っていたのだと思います。
今の分野の研究に携わろうと思ったきっかけはなんですか
父親が臨床医、母親が数学者で、自然に融合分野に目がいくようになりました。育った時期がPCの黎明期で、プログラミング(その頃は高級言語がなかったので、機械語周りまで自然に扱っていました)のスキルが自然に身についていたのも大きかったと思います。
医学系の勉強をしてからの研究と生物系や理学部系の勉強をしてから研究をすることのメリット、デメリット
医学系の教育ではヒトという種に関して網羅的に知識を入れるので多少知識の性質が変わります。たとえば私の専門分野では、理学部系の人だと特定の現象にものすごく詳しいという感じになりますが、医学系だとオールラウンダーが多いと思います。また、就職先の系統が少し変わると思います。
研究者の1日のスケジュールについて教えてください
午前中は数値計算、数理解析等の深く潜る必要のある仕事をして、午後は実験操作や事務仕事、夕方から夜にかけては学生さんの指導(学部学生が主体)をしています。季節労働で講義実習が入ります。なお、研究の進捗や講義実習の準備等で休日出勤をすることもありますが、趣味のようなものであまりストレスはありません。
留学は必要だと思いますか
必要と思います。設備やお金、人脈を形成するという面もありますが、別の文化圏を見るという経験が一番重要だと思います。アメリカもすでに夢の国ではなくなっていますが、それでも学ぶことは多いと思います。他のヨーロッパ諸国でもそれぞれ独特の強みがあって参考になります。