基礎医学研究とは

ノーベル賞受賞のニュースなどでも、よく耳にする「基礎医学研究」

そもそもどんな学問なの?  「臨床医学研究」と何が違うの?

臨床医学の進歩にも欠かせない、「基礎」研究

  「医学研究」というと、患者さんを直接治療するための臨床医学を想像する人が多いかも知れません。しかしながら、臨床医学はヒトのカラダの仕組みを理解する為の「基礎医学」に立脚しており、基礎医学の進歩は臨床医学の発展にも欠かせません。

  基礎研究は、直接何かの役に立つとは限りませんが、長いスパンで考えれば、社会に対してより大きなインパクトを与える可能性があります。たとえば、最近日本人がノーベル賞を受賞したiPS細胞やオートファジー、がん免疫療法などはいずれも基礎医学研究の成果であり、これまで根本的治療法のなかった疾患の克服に大きく貢献すると期待されています。1960年代に発見されたクラゲの緑色蛍光タンパク質GFPは、当初は何の役にも立たなかったものの、時を経て、現代の基礎医学・生命科学研究に無くてはならない技術になりました。

  

ヒトのカラダを様々な側面から理解するための学問

  基礎医学とは、正常および異常なヒトのカラダを様々な側面から理解するための学問の総称です。生命機能の本質を理解することを目標としているため、多くの研究者は、疾患の克服そのものではなく、むしろ知的好奇心に導かれて研究をしている傾向があると言えるかも知れません。また、ヒトを使ってできる実験は限られているため、基礎医学研究者の多くは、ヒトそのものではなく、マウスや、場合によってはニワトリやサカナ、ショウジョウバエといったモデル生物を使って研究を行っています。しかしながら、ひとたび新しい知見がもたらされれば、やがてはヒトの理解にもつながり、多くの患者さんを救うことになるかもしれません。

  こうしたことから、基礎医学には、医学科出身者ばかりではなく、多様なバックグラウンドの研究者が従事しています。九大医学部にも医学科以外の出身の教員が多く在籍しています。

  

研究って?ロンブンって?

  このように、基礎医学研究者は、日々研究室で研究を行うのが仕事です。しかし、研究者は実験だけをしているわけではありません。新しい技術の習得や研究成果の発表のため、国内外の研究機関や学会に行く機会も多くあります。そして、研究成果を論文にして、世の中に知らしめることが当面の目標です。研究は世界が舞台ですので、論文や学会での発表は当然英語で行います。

  学部生や大学院生も立派な研究者です。研究室に配属されると、研究の作法を習うだけでなく、すぐに最先端の研究を担い、科学の発展を牽引する役割を担うことになります。多くの場合、論文は連名で発表しますが、貢献順に名前が並ぶのが慣例です(研究責任者は最後)。博士号を取得する上では、筆頭著者の論文を発表することが要件になっています。自分の発見で世界を変えることができるかも知れない、と考えるとワクワクしてきませんか?