研究者のキャリアパス

キャリアパスの大まかな流れと

先輩研究者の実際の歩み

基礎医学研究者のキャリアパス

基礎医学研究者の活躍の場

基礎医学研究者は、国内外の大学や研究所、製薬会社といった民間企業などで活躍しています。

 

基礎医学研究者になるには…

研究者には、「これを取得したら研究者になれる。」といった資格はありません。必要なのは、科学的知識や実験技術、論理的な考察力など研究に関する能力です。

この『研究力』を身に付けるには、研究経験を積むことが大切で、最も一般的なのは、大学院へ進学し研究室で指導を受けながら、自分の研究を進めていくことでしょう。

修士号や博士号は研究力を身に付けた、証明書としてみなされます。

世界レベルの研究を行う基礎医学研究者は博士号の取得でようやく一人前とも言えます。基礎医学研究者の道を目指す皆さんは、ぜひ博士号の取得もひとつの目標としてください。

 

 

 

 

 

現役基礎医学研究者のキャリアパス

基礎医学研究者のバックグラウンドは多様で、医歯薬学部から、獣医学部、理学部、農学部など出身学部も様々です。

九州大学で活躍中の基礎医学研究者のキャリアパスを紹介します。

疾患情報研究分野
今井 猛 教授

理学部から基礎医学研究者へ 32歳でPIに

  • 2001年

    学部

    東京大学理学部卒業

  • 2003年

    修士

    東京大学大学院理学系研究科修士課程修了

  • 2006年

    博士

    東京大学大学院理学系研究科博士課程修了

  • 2006年-

    ポスドク

    東京大学大学院理学系研究科

  • 2010年-

    PI

    理化学研究所チームリーダー

  • 2017年-

    PI

    九州大学大学院医学研究院教授

ひとこと  
学部4年からポスドクまで約10年間、東大の坂野仁先生の研究室にいました。研究室を1つしか経験せず、留学もしていないのは、良くも悪くもまれなケースだと思います。博士課程の後半はかなり大変でしたが、研究者としても、人間的にも大きく成長する機会となり、今となっては良い思い出です。32歳の時に理化学研究所で自分の研究室をスタートさせました。日本では早い方ですが、海外では30代で独立する人も珍しくありません。年齢に関係なく、実力主義なのが研究者の良いところです。

ヒトゲノム幹細胞医学分野
林 克彦 教授

農学部から基礎医学研究者へ 胎内の神秘に魅せられ研究の世界に

  • 1994年

    学部

    明治大学農学部卒業

  • 1996年

    修士

    明治大学農学研究科修士課程修了

  • 1996年-

    助手

    東京理科大学生命科学研究所助手

  • 2002年-

    研究員

    大阪府立母子保健総合医療センター常勤研究員

  • 2004年

    博士

    論文博士取得

  • 2005年-

    ポスドク

    Wellcome Trust/Cancer Research UK Gurdon Institute, University of Cambridge

  • 2009年-

    准教授

    京都大学医学研究科准教授

  • 2014年-

    PI

    九州大学大学院医学研究院教授

ひとこと  
修士課程を出てから、当時東京理科大学生命科学研究所所長であった多田富雄先生に助手として雇用してもらいました。働きながら博士号を取得するのは大変でしたが、周りの方のサポートに助けられました。博士号取得後は、一人前の研究者になるべく、大阪、英国、京都と渡り歩き、九州大学に研究室を持つことができました。

系統解剖学分野
三浦 岳 教授

医学部卒業後、そのまま大学院へ 数理を通じて生物の形作りを見る

  • 1996年

    学部

    京都大学医学部卒業

  • 2000年

    博士

    京都大学大学院医学研究科博士課程修了

  • 2000年-

    助手

    京都大学大学院医学研究科 助手

  • 2002年-

    海外特別研究員

    日本学術振興会海外特別研究員
    (Oxford 大学研究員)

  • 2004年-

    助手

    京都大学大学院医学研究科助手

  • 2008年-

    准教授

    京都大学大学院医学研究科准教授

  • 2013年-

    PI

    九州大学大学院医学研究院教授

ひとこと  
皆さんが想像する生物系の基礎研究者とはかなり異なるキャリアパスを経てきました。 基礎研究の世界は過当競争に見えるかもしれませんが、実は間口が広くて、色々な能力を活かす場があります。
何か周りと違う得意技を一つ持っておくと、それを軸に道が開けると思います。

発生再生医学分野
目野 主税 教授

生命科学科と同様に生物の体の事を学べるということで獣医学科に進学

  • 1995年

    学部

    東京大学農学部獣医学科卒業

  • 1998年

    博士

    大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了

  • 1998年-

    助手

    大阪大学細胞生体工学センター

  • 2002年-

    助教授

    大阪大学大学院生命機能研究科

  • 2005年-

    PI

    九州大学大学院医学研究院教授

ひとこと  
獣医学科で学ぶうちに発生現象に興味を持つようになりました。卒業研究のために医科学研究所の豊田裕先生、臨床医学総合研究所の濱田博司先生の下とで実験させてもらいました。濱田先生の異動と共に阪大に移り、阪大で実験三昧の日々を送りました。当時、実験した量は誰にも負けません!大変でしたが、充実した日々でした。我武者らにやっているうちに、九大に教授として着任することになりました。

疾患情報研究分野
Marcus Leiwe 助教

イギリスから日本へ 日本を研究の場に選んで

  • 2007年

    学部

    英国キングスカレッジロンドン卒業

  • 2013年

    博士

    英国キングスカレッジロンドン
    (MRC神経発生センター)修了

  • 2013年

    ポスドク

    理化学研究所

  • 2017年

    助教

    九州大学大学院医学研究院助教

ひとこと  
未知の世界を探求し、脳の不思議を明らかにするのが楽しくて研究者になりました。イギリスで博士課程を修了後、それまでとは異なる環境で研究者としてのスキルアップを目指すため、今井研究室に参加しました。日本は研究者として自分自身のチャレンジを続ける上で素晴らしい場所だと思います。
イギリスでは博士課程に進む上で修士号は必須ではありません。また博士課程も日本より短く、多くの人は3-4年で修了します。このため、博士課程での研究経験は少なくなりがちですが、逆にその後ポスドクとして異なる研究室でより多くの経験を積めるとも言えます。研究レベルは日本と同程度ですが、イギリスの方が良い点は、博士課程の学生は給料をもらえるというところでしょう(訳注:日本の博士課程でも少しずつ整備されてきています。Q&A参照。)。

PhD Student
萩原 賢太

医学科卒業、医師免許取得後、大学院留学

  • 2013年

    学部

    九州大学医学部医学科卒業、医師免許取得

  • 2014年-

    博士

    Friedrich Miescher Institute for Biomedical Research / University of Basel(スイス)

  • 2021年-

    HSFPフェロー

    米国Allen Institute for Neural Dynamics

ひとこと  
医学部の学部学生時代、暇つぶしに生理学教室に顔を出すようになり、気づいたら研究が楽しくなって本業そっちのけで実験をするようになりました。九大時代は、「研究に興味がある」とメールをすると、時間をとって話をしてくれる基礎の先生が多く、卒業後に直接基礎に進む(同期では自分1人でした)不安は不思議とありませんでした。卒業後は、やりかけの仕事を終わらせて論文にするために一旦九大の大学院生として生理学教室に残り、その後はより興味のある研究テーマを求めてスイスの大学院に留学することにしました。30歳になってもまだ学生をやっているのも不思議な感じですが、のんびりとやりたいことを続けていって、そのうち自分の研究室を持ってオリジナルな研究ができればと思っています。

もっと知りたい方は、下記のチェック!!

[生命科学科 人材育成進路] http://www.biomed.med.kyushu-u.ac.jp/education/career.html