学生生活

2020年08月21日

専攻教育

令和2年度研究室配属(3年生)

  九州大学医学部医学科および生命科学科では、3年次に実際の研究室に配属し、研究生活を経験する実習「研究室配属」がカリキュラムに組み込まれています。これは、研究の醍醐味や重要性を認識するとともに、将来研究者として活躍するにあたり、早期に実際の研究分野に身を置き研究チームの一員として働くことにより、研究者としての自覚、倫理観の養成や、研究室での基本的な知識やルールを学ぶこと、また、協調的な学習環境の中で問題解決能力を高め、生命医学領域に対する学習意欲の向上を目指すことを目的としています。本年度はコロナウイルス感染拡大防止対策も行いながら、オンラインを活用しての指導が行われました。

  本年度、研究室配属を終えた3名の学生の感想文をご紹介します。

研究室配属感想文
医学科3年 芳永 博政

  今回の研究室配属で、私は病態制御内科学(第三内科)の消化器研究室に配属させていただきました。私は、今後学ぶことになる臨床医学に対するモチベーションをさらに高められるかもしれないという思いから、臨床に近い内容も学べそうなこの研究室を希望しました。

  
  今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、通常の研究室配属とは異なり、研究室には行かずにZoomを通じて研究室に所属している先生方が一人一人お話をするという形で進められました。やはり、実際に研究室へ通えなかったため、実験の手技や研究室のありのままの雰囲気など体験できなかったことも多々あったと思います。それでも、先生方が様々なお話をしてくださったおかげで多くのことを学べました。
  
  配属当初、この研究室で研究されている食道アカラシアなどの疾患についてはほとんど知らない状態でした。しかし、そのような状態の私にも伝わるぐらい、先生方は自らが行っている研究をわかりやすく噛み砕いて説明してくださったので、消化器研究室ではどのような研究を行っているのかが分かるようになりました。中には、内視鏡手術の練習風景を見せてくださった先生もいらっしゃいました。例年通りであれば内視鏡手術の練習を体験できたかもしれないと聞いて残念に思ったのですが、それでもこのような練習風景はなかなか見ることができないのでかなり新鮮に感じました。この他にも、臨床と研究の両立についての話や留学の話、消化器内科に進んだ時のメリットなど、自分の将来を考える際に参考となる話をしてくださった先生もいらっしゃり、大変ありがたかったです。
  
  このように、一か月を通じて様々なお話を聞いたことで、消化器研究室に対する興味がより一層湧きました。幸いなことに、先生方は興味があれば見学しに来ていいとおっしゃっていたので、コロナ禍が収まり生活にも余裕ができた時には、研究室を訪れて今回体験できなかったことを体験し、さらに学びを深められたらいいなと思いました。
  
  最後になりますが、お忙しいところ貴重な時間を割いてくださった先生方に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

  ■病態制御内科学分野のウェブサイト

 


研究室配属 感想文
生命科学科3年 清田 真由

 

  私は、生体防御医学研究所・炎症制御学分野にお世話になりました。高校生の時から、細胞内で起こっている現象を小さな分子から明らかにすることに興味があり、今回この研究室を希望しました。研究室では、細胞内のプロテアソーム分解機構に関連する分子であるユビキチンの研究をしています。ユビキチンは76のアミノ酸からなる小さいタンパク質で、他のタンパク質の修飾を行っています。ユビキチン同士も鎖を作り、鎖の結合方法によってタンパク質分解、DNA修復、翻訳調節、シグナル伝達など異なった機能を示します。ユビキチンの機能については2年生の授業の際、さらっと習った程度でしたが、実際に論文や研究を見てみると不明な点が多く、実験する内容は多岐にわたっており、今後の研究成果が楽しみな分野です。

  
  新型コロナウイルスの影響もあり、配属期間の3週間は研究室には行かず、オンラインでジャーナルクラブやミーティングに参加させていただきました。ジャーナルクラブは2週間に1度行われ、研究者が面白い・議論の余地があると思った内容を英語で1時間ほど発表後、他の先生方と議論を重ねる会です。論文の内容のみを発表するのではなく、論文が書かれる以前までにわかっていたことの紹介や基礎知識も発表内容に含まれます。議論は、他の研究室の先生方とも行われ、それぞれ異なった専門分野を持つからこそ活発で有意義なものになっていました。一方、プログレスミーティングは2週間に1度行われ、前回の発表からどのような研究の発展があり、今後1ヶ月は何を目的とし、どのような実験を行っていくのかを研究室内で共有していました。
  
  私は、今回初めて論文をしっかりと最初から最後まで読みました。もちろん、教科書でさらっと習った程度の知識で全てを理解することはできませんでした。しかし、図やデータ、調べた内容をもとに文を読んでいくと伝えたい内容が少しわかりました。論文を読んでいく中で気づいた点は、自分にはデータを読み取る能力が足りないこと、また、読むことに精一杯になってしまい自分で考えることが疎かになっていたことです。今後は、研究しながら知識を蓄え、考えて、質疑応答の際に発言し自分の考えを共有できるようになりたいです。池田教授から、論文の内容を全て鵜呑みにせず、自分の中で必ず正しいと言える部分を検証し、引っかかる部分を明らかにしていくことができたら研究していく者としてステップアップできる、ということを学びました。
  
  現在はフリークォーター期間に入り、引き続き、同じ研究室へ通っています。SDS-PAGEを用いたin vitro ユビキチンアッセイやUbiCRESTという実験を行いながら、ユビキチン活性化酵素・結合酵素・転移酵素がどのように働きユビキチン鎖が形成されているのかを調べています。不明な点の多いユビキチンの研究に関わることができ、また、分子レベルの研究をしたいと思っていた私にとって、とても興味を惹かれる内容に携わることができ嬉しく思っています。
  
  今までにないような大変な状況の中、受け入れてくださった池田教授をはじめ、柳谷先生、奥村先生、大熊さん、本当にありがとうございました。
   

  ■生体防御医学研究所・炎症制御学分野のウェブサイト

 
 


研究室配属 感想文
医学科3年 畑邊 信良
 
 
 
 
  今回の研究室配属では今井研究室(疾患情報研究分野、旧第2生理学分野)にお世話になりました。私は昨年から今井研の輪読会に参加していたこともあり、配属を希望させていただきました。
  
  本年度は新型コロナウイルスの影響により3年前期の通常の講義が全て遠隔開催となる中、研究室配属では前半2週間を遠隔の実施、後半2週間とフリークォーターは実習参加希望者が健康管理記録を付け、マスクの着用や換気などの感染症対策を取った上での実習となりました。
  
  遠隔での実施ではラボミーティングや他研究室との共同セミナーに参加して研究者の発表を聞くと共に、各自に割り当てられた論文をまとめ、抄読会で発表をするといった内容になりました。私はつい先日に発表された全身麻酔に関する論文を読みましたが、最新の論文を読むのは知識の教示を目的として構成された教科書を読むのとは異なり、使われている手法について調べ、結果についても著者の着眼点と解釈を読み解く必要があり、時間もかかりました。しかしながら1本の論文に対してしっかりと読むことでその分野の基礎知識に関してもザックリと網羅することができたと感じましたし、次に論文を読む際には非常に大きな足掛かりとなるだろうと感じました。2週目には研究室で行える実験の紹介を兼ねた今井研メンバーの皆さんからの研究紹介も行われ、この前半2週間だけでも多くの知見を得られたと感じます。
  
  後半では、研究室メンバーの実験の見学と、基本的な実験操作を習いながら先輩の実験を手伝うという形での参加となりました。見学では、マウス胎児へのエレクトロポレーションやマウスの脳の透明化など、論文のMethodで読んだり講義で説明を聞いていたりしてもイメージが掴めていなかった部分を実際に見ることができました。実際に自分で手を動かしてやった実験は、最終的には神経細胞を多色で発色させることによって個々の神経細胞がどのように突起を伸ばしているかの可視化に役立てるための、プラスミドへの蛍光蛋白DNAの挿入なのですが、こちらは制限酵素による切断やPCR、大腸菌を利用した増幅など分子生物学の基礎であり、これらを学べたのは有意義であったと感じます。フリークォーターでは、本年度は遠隔開催となった第43回日本神経科学大会にも参加させていただきましたが、神経分野での研究成果が実際の臨床で使われている実例なども紹介され、基礎と臨床が地続きであることが改めて感じられました。
  
  今井研究室では毎年輪読会を行っており(詳細はHPを見て頂けると良いかと思います)1年生のうちからでも参加が可能です。今井研に限らず他の研究室でもラボの見学などは歓迎していると思いますので、生命科学科はもちろん医学科でも「研究に興味あるんだけど」という方は1・2年生のうちから参加してみると、普段の授業よりも実践的な話を聞くことができ、3年次の研究室配属が一層有意義なものになるのではないかと思います。

  最後になりますが、本年度は様々な制約がある中での研究室配属となりましたが、お忙しい中我々を受け入れて下さった研究室の皆さまに感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。


  ■疾患情報学分野のウェブサイト 

 

 
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