学生生活

2010年09月25日

その他

第3回生命科学科キャリアアップ夏合宿

2010/09/25-26



 3回目を迎えたキャリア・アップ夏合宿は、「脳科学」関連をテーマとし、宗像市にある保養・研修施設「グローバルアリーナ」で9月25、26日に開催されました。世話役の飛松教授により、ロール・モデルとして3名の研究者のお話を伺う場として企画されました。  最初の講演者として、熊本大学大学院自然科学研究科の准教授として活躍されている林田祐樹先生に「網膜と脳と私」の題目で講演していただきました。初めに、国立佐世保工業専門学校電気工学科の高学年時に観た映画「StarWars:エピソード5」にでてくるロボットの義手に興味を持ち、「生体神経とロボットのインターファイス」を夢見て九州工業大学に進学され、その後、生体神経の仕組みにのめり込まれたという経験をお話しされました。その後、州立カリフォルニア大学Davis校への留学時代から始まった「網膜の細胞で何が行なわれているのか?」という視覚情報の網膜での前処理の役目に関する研究内容を過去10年くらいの間で急速に展開したトピックス(資料1)と、当時の研究の話をされ、また熊本大学でのヒト脳への磁気刺激と脳-筋肉間の活動相関性、さらにはカーボン・ナノチューブを利用した神経電極の開発に関する最近の研究を紹介していただきました。
 

 2番目の講演者として、千葉大学薬学部の大学院博士課程修了後にシカゴ大学薬学部でのポスドクを6年経験された後、2004年から(独)理化学研究所脳科学総合研究センターのチームリーダーを担当されている下郡智美先生により「Forebrain development(視床の発生と進化)」と題した英語による講演をしていただきました。導入部分では発生学上、非常に有名なシュペーマンによるオーガナイザーの研究を紹介され、神経管からのForebrain(終脳)、Midbrain(中脳)、Hindbrain(後脳)へのパターン等につき、ニワトリとウズラのキメラの解析やmorphogenとしてのFgF8を自在に操作することでマウスの初期発生の段階での形成過程の変化について、極めてユニークな子宮内遺伝子導入法(FgF8を発現するように構築したプラスミドDNAを胚の目的の部位に注入し、電気刺激し、時間、場所特異的な過剰発現を行う)を用いた研究成果をお話されました。幼少期(2歳半から)の在米経験の上に、長期の米国での留学経験によりネイティブスピーカー並みに流暢な英語を話されましたが、日頃あまり英語での講義に慣れていなかった学生諸君には、話の内容を理解するのが精一杯だったのかもしれません。それでも「あまり上司(指導者)に言われた通りのことをする必要は無い」という、自分の頭で考え研究の突破口を開かれた先生からのメッセージはインパクトがあったろうと思われます。この他、理化学研究所でのサマープログラム(2週間の講義主体のコースや2ヶ月のインターンシップ)も紹介され、意欲がある学生への積極的な参加を呼びかけられました。(資料2)  2日目の午前中の講演者として、心理学から睡眠研究に入り、現在(独)情報通信研究機構未来ICT研究センターの研究マネージャーとしてご活躍中の宮内哲先生から「夢を見ている脳を見るー脳波、神経心理学からfMRI研究の最前線までー」と題するお話がありました。レム睡眠(Rapid Eye Movement Sleep)中の急速眼球運動に関する“夢の中の像を走査するために生じる”という「走査仮説(Scanning hypothesis)」の真偽について、仮説の検証過程(先行研究を踏まえた仮説・命題の提示→作業仮説→実験による作業仮説の検証)(資料3)に即した実例を示されました。今年発表されたREM sleep behavior disorder(RBD)患者において、goal directedな行動としてレム睡眠時の急速眼球運動の方向が一致しているという報告や、左半側無視(left hemineglect)等のご自身の研究成果を含めて紹介されました。最後に、2002年の研究構想から始まり、色々な試行錯誤を経て論文作成・受理に至る長年の取組みを含めた「脳波とfMRIの同時計測による走査仮説の検証」の研究成果で締めくくりをされました。
 

 なお、初日の夕食後には、テーマに関連した事前学習 (①脳に関して調べたこと、②将来どのような職に就きたいか?、③課外活動などの体験談)による準備をしてきた2年生による発表会も行なわれ、3年生や参加教員からのコメント・質疑応答等を通じて、学生達が各自のキャリアを考える動機付けとなることが期待されました。  3名の講師の先生のお話は、どれも学生にとって啓発的で刺激が多いお話であったと思います。また、一泊二日の短期間とは言え、「合宿」を通して同級生・先輩を含む多様な考え方を持った人材と交流することで、学生達が各自のキャリアを少し具体的にイメージし考える良い場となったのではないかと思われました。
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