学生生活

2009年09月19日

その他

第2回生命科学科キャリアアップ夏合宿

2009/09/19-20

 トップバッターとして、九州大学生体防御医学研究所でSSP学術研究員・特任准教授として活躍されている石谷先生に「モデル動物を用いたシグナル伝達学と発生生物学の融合」との題目で講演していただきました。初めに、研究における各種モデル動物のメリット、デメリットを解説され、個体発生研究にゼブラフィッシュを利用することの魅力をお話しされました。分子から個体レベルに至るシグナル伝達に関する石谷先生の研究に、ゼブラフィッシュが如何に活用されているかを分かりやすく紹介していただきました。さらに、各種シグナル伝達を可視化できるゼブラフィッシュの開発と、これを使用した突然変異や薬剤スクリーニングの今後の展望をお示しいただきました。また、ご自身の研究テーマに至るまでのエピソードもご紹介いただき、学生諸君には大学で研究を続けることの楽しさを感じたのではないかと思います。

 2番目の講演者として、歯科医師として口腔外科領域で臨床を進めながら、日本で最初の再生医療に特化したベンチャー企業J-TEC(1999年起業)の常務取締役研究開発部長としてご活躍の畠先生に「再生医療を斬る 生命科学と新しい医療の普及と産業化のはざまにあるもの」と題するお話をしていただきました。最初に、1975年に実施された自家増殖の表皮の細胞培養を使った移植の例や1981年の例等を示され、再生医療の先駆けの研究、日本における再生医療の産業化の現状(2009年現在、臨床試験の前段階である確認申請に適合したものが9品目のみである等)を詳しくご説明いただきました。一方で、「Vacanti 兄弟らのヌードマウスの背中に軟骨細胞によって耳を形成させた例」を糸口とした再生医療に対する世間のやみくもなヒートアップ状態に関して、そろそろ考え直す時期に来ていること、そしてその際のポイントとして、「① 今までに治らなかったものが治る」という観点のみでなく「② より患者の負担の少ない方法で治る」、「③ 高度・複雑な治療手技を要することなく治る」、という観点も重要であり、今後の取組むべき課題を示されました。その中には、「安全性・有効性の客観的評価基準」をどう取扱うべきか、通常の医療における医師と患者との間の信頼関係をベースにさらに産業化への信頼関係の構築が必要であること、生命医科学研究者による医師の立場を超えたイマジネーションによりパラダイムシフト[in vivo Medicine → ex vivo Medicine]が達成されることへの期待等を話されました。数々の実例や分かりやすい例えのスライドを準備され、最後に生命科学科の学生へ「医療におけるプロの科学者として若い柔軟な発想を展開して欲しい」とのメッセージをいただきました。多くの学生にとって啓発的で刺激が多いお話であったと思います。

 2日目の午前中の講演者として、整形外科医であり、九州大学医学研究院SSP幹細胞ユニット特任准教授として活躍中の岡田先生から「中枢神経の再生医学」と題するお話がありました。初めに、生命科学科の人材育成イメージをもとに、生命科学科学生に対する期待を述べられ、その中で、テレビコマーシャルや広告等にあふれるサプリメントなどの疑似科学、意味を持たないグラフ等を例に挙げ、科学リテラシーを身につけ、考える力を養うことの重要さを指摘されました。引き続き、整形外科医として脊髄損傷の患者さんの治療にあたった日々、そこから脊髄損傷の治療法の開発を目指して、研究の世界に踏み込んだ経緯についてお話しされ、さらに、岡田先生が取組まれている神経幹細胞を利用した脊髄損傷の治療法開発の現状と困難さにつき、分かりやすい解説をしていただきました。また、岡田先生には、合宿期間を通して学生へ厳しくも暖かいエールをいただきました。
■  学生の感想文
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