学生生活

2008年09月20日

その他

第1回生命科学科キャリアアップ夏合宿

2008/09/20-21

 生命科学科のカリキュラムでは、第2学年の後期に専門科目の導入にあたる「生命科学概論I・II」等を履修し、第3学年の後期からは「分子細胞生物学」「生体応答制御学」「生体情報機能学」「先端医工学」の4つのコースに対応した専門科目を学習します。今年度はこの4つコースの中から「先端医工学」をテーマとして選び、学生達がテーマに関連した事前学習を踏まえて、ロール・モデルとしての専門の先生方や企業の研究者のお話を伺う場として企画しました。短期間ではありますが、「合宿」を通して多様な考え方を持った人材と交流することで、学生達が各自のキャリアをイメージし考えるきっかけとなることを期待しています。次年度以降も、学生達から寄せられた感想を踏まえて、企画を継続できればと思います。
 

 なお、今回ご講演をいただいた講師の村田先生から、講演内容の概要の理解に資することを目的に、参考資料をお送りいただきました。安永先生からは、今後の学習の参考として有用なサイトをご教示いただきましたので、下記にまとめて提供します。
○「今年のロボット」大賞2007 http://www.robotaward.jp/archive/2007/prize/

○産学連携に向けた厚生労働省の取り組み http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/05/h0526-1.html

○医療技術産業戦略コンソーシアム http://www.jfmda.gr.jp/metis/index.html
■  村田先生のスライド(保護されたPDF)



 番外編―久山町研究

合宿での予定していたスケジュールが終了した後、生命科学科の学生4名は、岩城先生の車に分乗して日本の疫学研究の拠点の一つ九州大学大学院医学研究院環境医学分野久山町研究所(通称:久山町研究室)を訪問しました。訪問先では、谷崎弓裕先生(社会環境医学講座・環境医学分野)には、久山町研究室の実際を分かりやすく紹介していただきました。学生さんは疫学研究の概要を知ることができたのと、久山町研究のデータ収集の緻密さ、蓄積されたデータ管理のスケールの大きさを肌で感じることができ、医学統計学を学ぶ良い動機付けになったようです。将来、生命科学科の学生さんが情報科学の専門家として久山町研究に興味を持って、参加する機会があることを期待したいと思います。次に休日にもかかわらず受入れをしていただいた谷崎先生からの「感想のコメント」を掲載します。


谷崎先生からのコメント
「生命科学科の学生さんを久山町研究室に迎えて。」

 
   
平成20年8月、神経病理学教室の岩城教授より、9月21日に生命科学科2年生4名とともに久山町研究室を訪問したいとのご依頼があり、軽い気持ちで引き受けました。後日、送られてきた学生さんのプロフィールをみて直接は疫学研究と関係のない分野と知り、どのような内容を話せばいいのか悩みました。 疫学は、健診や診察を通じてデータを地道に集め統計解析を行い、医学の基礎資料となるデータを出す地味な分野です。先端医学を目指す学生さんが興味を示すかどうか不安だったのです。

訪問当日、岩城教授のもと研究室に訪れた4名の学生さんは、やや緊張した面持ちで私と対面しているように見えました。まずは肩慣らしに、疫学のこと、コホート研究のこと、久山町研究のことについて用意したプリント資料を参照しながら説明し、時に質問を交えたりしながら学生さんの疫学の基礎知識を確認していきました。

ひととおり話し終えた後、質問タイムを設けました。私の予想としては、一つぐらい質問が出るかどうかと思っていましたが・・・・・。

「どうして久山町で疫学を始めたのですか?」
(昭和36年当時の先輩方が疫学に適した町村を調べ、久山町の住民、町、開業医の方々の協力があったので始められたのです。これは楽な質問。)

「データの管理や使用にあたって本人から了承はもらっているのですか?」
((承諾書を見せつつ)承諾書をいただいていますが、いただくまでは結構大変なのですよ。)。

「どうすれば疫学研究で示されたデータが確実と証明されるのですか?」
(う!するどい質問。EBM(evidence-based medicine)というのがあって・・・。)

などなど、質問への返答に大変でした。さすが研究者の卵です。

このあと、昭和36年から現在までのカルテ、DNA検体の保存状況、遺伝子解析室を見てもらいました。学生さんの目には久山町研究はどのように映ったのでしょうか? 久山町研究には、研究の面白さ、難しさ、多くの方々の協力や成果が詰まっていることが分かってもらえたら嬉しい限りです。将来、皆さんと一緒に研究できる日を楽しみにしています。


谷崎弓裕
訪問した学生による久山町研究室訪問印象記
「研究」と聞けば実験室でピペットマン片手に薬液を…というイメージでしたが、今回伺った久山町研究室では(もちろんそのような実験も行っているのでしょうけれど)私のイメージとは違った「膨大な量のデータを分析する」という作業を行っていました。およそ50年分になる何万ものカルテは現在も更新され続けており、それを整理し、様々な媒体に記録し、そこから研究対象とするデータを決め分析します。どこまでも根気のいる研究で、今の私にはまるで備わっていない力がそこでは必要になります。いくら実験が上手くデータを数多く出せても、そのデータを分析できなければ意味がない、その思考力と粘り強さが必要なのだと考えさせられました。そして、それだけ大変な仕事をなさっているにも関わらず、我々を案内してくださる先生のお顔が始終笑顔だったことが印象的でした。(R.O.)

久山地区を訪れるのは初めてだった。研究所では、住民の方々が研究に対してとても協力的で、その上データが全国平均に近いという研究する側にとって恵まれた地域だと知った。また、その地域全体の何年分ものデータを保管しておくことの大変さも、部屋のセキュリティの高さで感じることができた。研究にとってデータはとても重要なもので、その取り扱い方を学べたと思う。(T.N.)

今回初めて久山地区を訪れましたが、「住民のデータをほぼ完璧に取り、それを元に研究している」という話を聞いたときは、勝手に怖いイメージを抱いていました。しかし実際は、データ収集というのは住民の方々も了承の上で行われていることで、健康状態を毎年細かく調べてそれを積み重ねていくというものであり、意外と普通(?)でほっとしました。情報の収集方法は派手ではありませんが、その量と幅広さは回を重ねるごとに膨大になっており、これだけ継続してきたことは本当に凄いなと思いました。それらのデータを用いて原因が確定された病状がいくつもあり、データや統計は信頼できる判断材料の一つであることを強く感じました。(Y.K.)
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