在学生の声

在学生の声

知識を増やすことは無駄にはなりません


平成24年度 生命科学科4年 濱﨑 英臣さん

 

研究者を志したきっかけを教えてください。

 内科医をしている父の影響もあり、小さい時から医療全般に興味があり、将来の進路として医療系を考えていました。そんな中、僕が高校生の頃に、認知症の祖母が僕のことがわからなくなり、娘である僕の母のこともわからなくなっていきました。認知症は現在も治療法が見つかっておらず、進行をなだらかにする薬物療法しかありません。祖母と母を見ていて、認知症を根治したいと思うようになりました。

 具体的に研究者を目指そうと思ったのは入試近くになってからでした。地域医療に携わる父が「自分は目の前にいる患者を救えるだけだけど、研究者として治療法につながる研究が出来るならもっと多くの人を救うことが出来る。」と道を示してくれました。祖母のこと、父の助言で僕は研究者を目指そうと思いました。

入学してからの感想をお願いいたします。

 医学部の中の生命科学科で、医学のことを学べたのは大きいと思います。僕の場合はどの授業も、認知症の特効薬に何か繋がればという視点で受講していたので、余計にそうなのかもしれません。興味を持って受講出来たのでとても面白かったです。カリキュラムも臨床系、基礎系、情報系と幅広く学ぶことが出来ました。

 それから、生命科学科は定員が12名と他学部より少ないのですが、僕は田舎の方の出身で小学校は、学年が10名ちょっとだったので、自分の性にはあっていました。個性的な人が多く、僕もそうなのですが、中学、高校で生徒会だった人も多くいて、みんな協力的でよくまとまっていたと思います。同期の横のつながりはもちろん、後輩とのつながりも持とうとして、後輩に声を掛けたり、飲み会に誘ったりと縦のつながりを持つことも出来ました。後輩との取りまとめは他の人で、僕は授業に関する取りまとめなどをして、同期内で自然と役割分担していました。

卒業研究などで、実際に研究に取り組まれた感想をお願いします。

 認知症の研究をしたいと思っているのですが、やっぱり思ったとおりにはいかないです。今まで多くの方が研究をされてきて、今尚、治療法が見つかっていなのですからそう簡単にいくはずがありません。実験をやっていてアプローチの仕方もまだまだ勉強不足で、どういう風にしていいのかなと手探り段階です。勉強していくこともたくさんあり、ひとつの論文を読んでいても、その中に引用されている別の論文を読む必要があり、また、新しい論文は日々発表されています。僕は認知症の研究をしたいと思っているのですが、認知症だけではなく、類似する他の病気にも視点を広げていかないといけないですし。そんなことが難しくもあるけれど楽しいことでもあるのかなと思います。

 実験は同じ手法、手順で、同じことを何度も何度もする必要があり、一見すると地味ですが、出てくる結果は当然異なります。その結果を検証し、結果から考察していく過程が楽しいことであり、それを思うとその反復する作業も全く苦ではないと僕は思いました。知識をどんどん増やして、実験の手法を増やして幅広く広げていきたいと思います。

 実際にやってみるまで、自分に合うかどうかはわからないと思いますが、人によっては楽しいと思います。少なくとも僕は楽しいです。ですが、僕はこういった研究における実験、考察などは楽しいと思えても、大勢の前で話すことが得意ではなく研究結果の発表が苦手です。それはこれから慣れていかないといけないと思っています。

大学生活で印象に残った出来事はなんですか。

 昨年の12月の始めに、福岡で開催された第35回日本分子生物学会年会でポスター発表をさせて頂いたことです。このポスター発表では、英語でポスターを作成し、決められた時間に自分のポスターの前で説明を行います。その発表の時に他大学の教授から「薬物動態学的にはどうなのか。」という内容の質問を受けました。僕の発表と直結することではなかったのですが、自分が全く考えていなかった視点でのお話を聞かせて頂くことが出来、非常に興味を惹かれました。分子生物学会では、他の人の発表も聞き、見て聞いて非常に勉強になりました。自分の知らない知識の収獲もありましたし、今後このような経験が、自分が研究を行っていく上で役立っていくと思います。学生のうちからこのような経験はなかなか出来ないので、とても有り難いと思いました。初めての学会発表でありましたので、「あーこれが研究者としての第一歩なんだ。」と思って感慨深くもありました。

生命科学科の授業で特に印象的だったのはなんですか。

 科学英語Ⅱの英語のポスター発表と卒業研究発表会は特に印象に残りました。
 科学英語Ⅱは、3年生の早期研究室配属での内容を英語でポスターにまとめ、英語で発表、質疑応答もすべて英語で行います。発表の2週間前くらい前からBS情報教育室にみんなで集まり、発表の練習をして、お互いにアドバイスをしていました。担当の先生も個人個人に英語での発表のレッスンをしてくださいました。この経験があったので、分子生物学会の発表はある意味では気が楽でした。分子生物学会では質問を受けても日本語でそのまま自分の考えを表現できますので。

 卒業研究発表会は、4年生の研究室配属での研究内容をパワーポイントにまとめ、先生方、学生達の前で発表を行います。発表時間も15分と決められていて、過不足なく時間内に内容を伝えなくてはいけません。3年生のときに先輩の発表を聞かせて頂いて、先生方が深く鋭い質問をされているのを見ていましたので、自分の発表のときにどんな質問をされるのだろう、制限時間に話終わるのだろうかと、とても緊張しました。こういうことは研究者として必要なことであるし、学部生のうちからなかなか経験できることではないのでとてもいい経験になりました。

これからの進路を教えてください。

 九大の大学院医学系学府医科学専攻に進学し、神経病理学分野に所属して研究を行っていきます。その後は博士課程に進学したいと思っています。神経病理学分野に決めたのは、自分が研究したい内容が第一ですが、学科の授業で岩城教授の授業を受講し、教授のお人柄に惹かれたことも大きいです。3年生の後期から岩城教授の研究室でお世話になっており、目上の方と話すことが苦手な僕にも、壁を作らず接しやすく接してくださり、教室員の方も良く指導して頂いています。

 僕は入学前と変わらず、認知症について研究を行っていきたいと思っています。このきっかけを作ってくれた祖母と父にはとても感謝していますが、この思いを一層強くしたのは、2年生の夏休みに生命科学科の夏合宿に参加したことです。自分の興味のある分野について調べて発表したのですが、それまでは大枠として認知症について勉強したいと思っていましたが、実際に深く調べてみて興味深いと思い、これ一本で勉強していき、将来これをやっていきたいと思いました。研究者は競争も激しいですし、甘い世界ではないと思います。でも僕は認知症の根治のため、僕が発見したことが直接的でなく間接的にでも役立つことが出来、認知症の根治に近づけたらそれは素晴らしいことだと思っています。ひとつの役割を担うためにも、まずは研究の厳しい世界に身を置き、自分なりの能力を身に付けていきたいと思います。

最後に研究者を目指す学生にメッセージをお願いします。

 自分の基礎の勉強として知識を増やすことは無駄にはなりません。後々の自分のためになると思って勉強でも部活でも今やっていることに手を抜かずに頑張って欲しいと思います。
 それから、何となく研究者というものに興味を持たれている方もいると思います。研究職といっても大学や製薬会社、研究を行う場所によって様々だと思います。もし、具体的に定まっていないのであれば、生命科学科は臨床系、基礎系、情報系といった様々な授業が幅広く行われていて、様々な分野に触れる機会は多いと思います。入学してから自分のやりたいことを絞っていくのもいいのではないかと思います。小人数の学科ですので、ひとつの研究室の配属される人数も1人~2人と少なく、丁寧に指導して頂けるのもこの学科の利点だと思います。

 最後に僕が学生のうちにやっておいた方がいいなと思ったのは、英会話ともっと体を動かすことです。研究者としての将来に英語は必須ですし、研究者も体力が必要な職業だと思います。

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