お知らせ

2025.06.03

第12回 医学歴史館 歴史のうねりセミナー「東野利夫展から戦争と医療を考える」を開催しました


セミナーの様子

2025年5月17日(土)、医学部百年講堂 中ホールにて、第12回 歴史のうねりセミナー「東野利夫展から戦争と医療を考える」(主催: 医学歴史館、共催: 医学部同窓会)を開催しました。

「歴史のうねり」と題されたセミナーは、本学における医学のあゆみと今後の展望を主なテーマとし、医学歴史館の主催により不定期に開催されています。今回の催しは、医学歴史館にて同日より開催されている展覧会「東野利夫展—戦後80年、戦争と医療を考える—」に合わせて開かれたもので、会場には学内外から約60名の参加者が集まりました。

故・東野利夫氏は本学医学部の卒業生で、第二次世界大戦末期であった在学中に、いわゆる「九大生体解剖事件」に居合わせるという凄惨な経験をされました。東野氏が生前、事件や戦争の悲惨さを伝えるために生涯を通して蒐集・作成した資料は、2024年4月に遺族から医学歴史館に寄贈され、「東野利夫氏関係資料」として収蔵されました。医学歴史館では、学生とともに時間をかけて資料の整理・調査を行い、今回、「東野利夫展」としてその資料の一部を公開展示する運びとなりました。

セミナーではまず、佐藤裕氏(医学歴史館企画推進担当理事、医学部同窓会理事)、須藤信行医学部長、外須美夫氏(医学部同窓会長)が、それぞれあいさつを述べました。

次に、医学歴史館の徳安祐子学術研究員が、寄贈された東野利夫氏関係資料の概要を説明しました。整理を行った結果、資料は約500点にのぼり、そのほとんどが東野氏の主著である『汚名: 「九大生体解剖事件」の真相』の執筆に関するものであったということです。徳安学術研究員は、資料の記録について説明しながら、東野氏の事件に対する思いが時間とともに変化しながらも、調査や講演の活動を続ける中で、加害や被害といった枠を超えて、より大きな平和というものへの思いを強くすることに至ったということが資料から伺えるのではないかと述べました。

続いて、医学歴史館とともに資料の整理にあたった学⽣たちが、整理・調査を通じて感じたことについて、学生を代表して医学部医学科6年⽣の中嶋涼⼦さんと同4年⽣の⼭本育⽣さんが発表を⾏いました。学生たちは主に、資料のリスト化や関連する文献の調査などを行い、また勉強会も随時開催してきたということです。発表では、事件についてこれまでに刊行された複数の文献で言及されている事実に相違があることや、一次資料が少なく、また信頼性も高くないことから、真相を明らかにすることが困難になっていることなどを説明しました。そして今回、調査を通じて、戦争という極限状況に置かれてしまったら、人は当時のような判断をしてしまう可能性があり、またそれは自分も決して例外ではないこと、そしてそれはウクライナをはじめとする世界中で起きている戦争にも共通し、現在の問題でもあることを学んだと述べました。

その後、本学大学文書館の赤司友徳准教授が「戦時下における医学専門教育と軍隊」という題で、東野氏が本学の医学部生であった当時の歴史的背景を、戦時という特殊な状況において医学専門教育と軍隊がどのような関係にあったのかという観点から論じました。「臨時医専」と呼ばれる軍医速成のための特別なカリキュラムや学徒出陣などの制度の制定により、多くの医学生が軍医になることを求められたこと、また、防疫研究や代用血液の開発など、研究テーマも軍によって誘導・要請されたことなどを説明した後、「大学の自治や学問の自由をどう守っていくか、平時こそ考えておかなければならず、また過去の過ちを繰り返さないために、その記録を保存・公開していくことも大学の一つの使命であると思う」と結びました。

最後に、同窓会副会長の桑野博行氏が閉会のあいさつを述べ、セミナーは終了しました。

展覧会「東野利夫展—戦後80年、戦争と医療を考える—」は九州大学医学歴史館にて、6月22日(日)まで開催されます。

※2025年6月20日追記
本展覧会の会期は8月31日(日)まで延長されました。期間中の休館日等については医学歴史館のWebサイトをご確認ください。

  • 徳安祐子 医学歴史館学術研究員

  • 医学科6年生 中嶋涼子さん

  • 医学科4年生 山本育生さん

  • 赤司友徳 九州大学文書館准教授

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