教授からのメッセージ
Interview
研究者を志されたのはいつ頃ですか。
本当に研究者として生きていく気持ちになったのは、大学で卒業研究をやって、就職するか、大学に残って研究を続けていくか、将来の選択を迫られたときでした。卒業研究は楽しかったですし、子供の頃から研究職に対しての憧れを持っていたのもあって、大学院に進学することに決めました。
どのように学生生活を過ごされましたか。
東京大学では、入学してからの2年間を教養部で学び、3年目に希望する学科へ進学するのですが、獣医学科に進学してからは、学習内容も専門的で俄然面白くなり、遅刻や欠席のない真面目な学生生活を送りました。獣医学科に進学してからも、勉強とうまく折り合いをつけ、合気道部は4年間をやり通しま した。その他にも、家庭教師や図書館でのアルバイトなどを、週一回くらいやっていました。
現在の専門に進まれることを決められたのはいつ頃で、そのきっかけをお聞かせください。
まず教養学部の2年間の間に、これから何を学んでいきたいかを考えました。数学や物理も面白そうだと思ったのですが、しっくりこなかった。何をやっていこうか悩み始めた時に、生物に興味を持って調べたのですが、分子や大腸菌といった肉眼では見えないものを対象にしたくないと思い、理学部も合わないのかと思いました。そうしたところに獣医学科の存在を知り、生命科学科と同じように、生物の体の事を学べるということもあり、3年生からは獣医学科に進学することにしました。
獣医学科に進学した後の3年生の冬には、卒業研究を行う研究室の選択をしなければなりません。そのあと数年はそこで研究を行うわけですから、この選択は非常に重要になってきます。講義を受けていない研究室も含め、様々な研究室から選択するのですが、私は一つの細胞である受精卵が何故一つの生物となって生まれてくるのかに非常に興味を持ち、豊田先生の医科学研究所獣医学研究部を希望しました。
今のご自分につながった軌跡をお聞かせください。
医科学研究所では体外受精やES細胞樹立に関する研究を行いましたが、豊田先生の退官が間近に迫っていたこともあり、今後の研究テーマを考えるよう指示がありました。考えた研究テーマについて豊田先生にご相談したところ、東京都臨 床医学総合研究所の濱田博司先生(現大阪大学教授)をご紹介頂きました。
濱田先生の研究室にお世話になることになり、そこで解析した遺伝子が、後に体の左右非対称性を生み出す遺伝子だということが分かりました。当時は体の左右を作る仕組みというものは解明されていませんでしたので、その遺伝子が左右軸というものを理解する突破口になったのです。
その後、濱田先生の大阪大学への異動と共に大阪大学博士課程に進学しました。毎日、毎日を必死に頑張っていたら、 大阪大学で助教、准教授に採用して頂きました。その後、縁あって九州大学の教授に着任することになりました。
今のやりがいをお聞かせください
研究は数年単位で取り組んでおり、毎日地道な実験を重ねて、深めていくものです。実験して予測した結果が出ることもありますし、そうでない場合もそれを考察し、次に何をすべきか考えて再び実験する。そうした積み重ねの中、新しい結果が見えてきた時は体が震えるくらい興奮しますよ。基礎研究の醍醐味は根本原理に迫ることが出来ることだと思います。何故、一個の受精卵が一つの生物になって生まれてくるのか、私はその仕組みが知りたいのです。卒業研究で解析した遺伝 子が体の左右を作る仕組みに関与していることが分かり、そこから哺乳類の初期発生についての研究をすることに至ったのですが、この時期は胚子がまだ成体からかけ離れた不思議な形態をとり、様々な発生現象が進んでいる非常に魅力的な時期なのです。それを細胞と分子のレベルで何が起きているのかを明らかにしたいと思っています。
学生にメッセージをお願いします。
目野教授について
目野 主税 教授
医学研究院基礎医学部門発生再生医学分野 教授
医学研究院基礎医学部門発生再生医学分野 教授
- 学生時代合気道部で鍛えられたこともあり、運動不足解消のため、休日には自転車で山中を巡ったり、マラソンをされていらっしゃいます。