在学生の声

在学生の声

木の枝を広げるようにいろんなことに
興味を向けてみてください。


平成30年度 生命科学科4年 石田 有輝さん

研究者を目指したきっかけを教えてください。

 幼稚園のときから外を駆け回り、虫を触るなど生物を身近に感じて育ちました。また、小学校に入学してからは、キュリー婦人や野口英世といった研究者の伝記を好んで読んでいました。小学校の高学年になり、農学部の研究室を描いた漫画を読んだことで、「研究職って仕事があるんだ。」と、研究者というものを具体的に意識するようになり、生い立ちも手伝って生物の研究者を目指すようになりました。
 その後、若干の揺れはありましたが、高校生のときスーパーサイエンスの授業で研究のプレゼンを行った際に、講師として来てくださった大学の先生に「発想力がすごい。研究者に向いている。」と言って頂いたことなどに後押しされ、研究者の道を歩むことに決めました。
 

本学科を選んだ決め手を教えてください。

 生物の研究者になるにはどの学科に進めばいいのか確信が持てないまま、漫画の影響もあって農学部を目指していたのですが、たまたま九州大学のパンフレットで、医学部の生命科学科を知りました。研究するなら、まだ解明されていないヒトの機序構造について知りたい、解明したいという思いが明確になり、医学科と同じくヒトの体について学べるこの学科に行きたいと思い受験しました。
 

入学してからの感想をお願いします。

 1年のときは伊都キャンパスで基幹教育科目を学びます。入学後すぐに研究者の将来に直結したことを学べるわけではなかったのですが、教養を身につけるというのは大人になっていくのにも必要なことだとも思いましたし、2年生から専門科目が始まってからの忙しさを知ると、1年生のカリキュラムはスムーズに「大学生」に移行していくための準備期間として良かったように思います。私は大学で初めて親元を離れて一人暮らしをしたので、入学してすぐは生活を形作るのに精一杯でした。そこに専門教育の重厚な講義があったら、かなりきつかったと思います。時間を充分に持てましたので、これからのやりたいことなど、しっかりと自分の思いと向き合うことができました。
 大学以外では、いろんな職種を経験したいと思い、垣根なくバイトしました。家庭教師や塾講師、デパートの試食販売に居酒屋店員と、いろいろ経験できたのが面白かったです。

 学内外を問わず友人が出来、その交流で感じたことを深く考えることで、新たな自分も発見出来ました。地元を離れて初めて、それまでの友人たちとは、ほぼ同じ環境で育ち、考え方、価値観が自然と合っていたのだと気付きました。自分以外の人と分かり合っていくということは一番難しいことのように思いますが、それにも増して人間は興味深いと思います。
 

入学してから感じた本学科の良さを教えてください。

 学科の募集定員が12名と少なく、縦のつながりが強いところが良いと思いました。修士、博士と進学して今も病院キャンパスにおられる生命科学科の先輩方も多くいます。
 入学してすぐの新入生オリエンテーションの日に、部活勧誘を目的とした花見がキャンパス内で行われていて、私も行ってみたのですが、私が生命科学科だということを伝えると、「生命の子が来たよー。」と修士、博士在籍中の先輩を紹介してくださり、先輩方も「来てくれてありがとう。」と温かく迎え入れてくださいました。それからも私が先輩方とお話しするのが好きなことも相まって、生命科学科卒業生、在学生合同の飲み会などに積極的に参加していました。受身の授業だった高校と違い、大学では自分で受講する科目を選択するなど、自分で動かないといけません。先輩方からの経験談はとても貴重でした。飲み会でもほとんど研究の話題になり、お互いの研究に関する話で盛り上がるなど、先輩方との交流ではプラスになることが多く、世代を超えた学生間のつながりがこの学科の良さだと感じました。

生命科学科の授業で印象に残っていることを教えてください。

卒業研究発表会
卒業研究発表会
 生命科学科4年の卒業研究が一番印象に残っています。3年生では5ヶ月の期間、1ヶ月ごとに希望する研究室に配属されるカリキュラムが組まれおり、まず3年生のうちに様々な研究室で研究に触れた後、卒業研究に臨むことができることもこの学科の良さだと思います。3年生の研究室配属は継続して同じ研究室に配属されることでもできますし、期間も5ヶ月から延長することも可能です。
 私は神経の研究をされている今井教授(疾患情報医学分野)の研究室に3年生の後期から卒業研究までお世話になりました。 3年生では各研究室で実験や研究室内のミーティングに参加することが出来るのですが、卒業研究は参加するのではなく、主体的に研究を進めていくといった感じで密度の濃いものとなりました。自分で研究テーマを考え、分からない知識を補完して、実験の計画し、研究を進めていくなど、とても忙しくやりがいのあるものになり、将来につながったという意味でも印象に残っています

研究室を選んだ理由を教えてください。

 3年生のとき、これから何の研究に進もうかと思い、遺伝子系の研究室に傾いていたのですが、「それで本当にいいのか?」という自分もいて、各先生の研究室のホームページから情報を仕入れていました。専門教育を受ける2年生の時は、今井教授はまだ九州大学に着任されておらず、1度も今井教授の講義を受講したことはなかったのですが、ホームページから神経の研究をしている今井教授を知り、研究に対する情熱や、指導熱心な点、お人柄を感じ取り、お会いしたいとアポイントをとったことがきっかけとなり、すっかり感化され、卒研、修士でもご指導頂くことになりました。

 それまで私は神経については興味がなく、自分が神経の研究をすることになるとは全く想像していませんでした。研究室の公用語が英語であることも興味を惹かれた理由のひとつです。
 

卒業研究での研究テーマを教えてください。

卒業研究発表会
卒業研究発表会
 卒業研究では「Relation between hormonal changes and olfaction during pregnancy(妊娠中のホルモン変化と嗅覚の関係)」について取り組み、修士でも継続して研究を行います。 この研究テーマは卒研が始まるときに今井教授より「何の研究がしたい?」と尋ねられ、自分で決めました。つわりは一般的に認知されており、「つわりのときこの匂いがだめだった。」などとよく言われますが、実はその機序というものは分かっていません。多くの人は妊娠中のホルモンの変化が及ぼす影響と思っていますが、妊娠期のホルモン変化の何がどの時期にどのように作用して、嗅覚など器官に変化を及ぼすかは、未だ明確な裏付けはないのです。

 このテーマは、今井教授が嗅覚の研究に携わっていることや、私が予てから雌雄差に興味があり、雌のホルモン変化を糸口に解明していきたいということで辿り着きました。 今井教授の研究室では、一人ひとりが自分の研究テーマについて取り組んでおり、私も卒研から一人でこのプロジェクトを任されています。

実際に研究に取り組んでみて感じたことを教えてください。

 研究とは、実験をして調べて黙々と突き詰めていく、狭く深いイメージだったのですが、実際は多岐にわたる能力が必要となるものでした。 コミュニケーション能力や、プレゼンテーション力、周りをよく知ってどのような言葉選びをしたら伝わるのか、研究に関する学術的知識や実験手技に加え、そういった総合的な能力が必要だと分かりました。学ぶことがたくさんあるし、そういう環境がありがたいと思います。

留学生と
留学生と
 それから、英語の重要性と研究者の進路は一本道ではないことが分かりました。
私は英会話を習っていたものの、受験英語で英語が嫌いになりました。ですが、研究の世界に足を踏み入れてみて、論文を読解するのに英語は必須で、英語でのコミュニケーション能力も重要であることを感じました。研究室に入る前は英語能力の習得も目的のひとつに研究での留学を意識したこともあったのですが、今井研究室では公用語が英語で、日本にいながら日常で英語に慣れ親しむことが出来ます。留学にこだわらなくとも英語能力を高めることは可能だと感じましたし、留学していないからといって研究者としての優劣が決まるわけでもないことを知りました。留学に限らず研究者として、将来へのアプローチには正解はないと分かりました。

 そして、世の中には自分が思いつかないような発想や考え方をする人がいて、研究者の中にはそういう方々が多くいるように感じました。自分もそうなれたらいいなと思うし、そういった方々とこれから出会うことが楽しみになってきています。

これからの進路を教えてください。

 修士に進学して、卒業研究のテーマの研究を引き続き行います。今はまだ未定ですが、博士までこの研究に取り組んでいきたいと思います。

 私は、ひとつのことについて答えが出るまで突き詰めて考えていきたいという面と、いろんなことに興味を持ち、多くのことを知りたいと思う二面性があり、修士、博士で研究のみに取り組むということについて迷った時期もありました。また、高校時代の友人は文系の大学を出て既に就職していることにも焦りを感じていました。

今井研究室のメンバーと
今井研究室のメンバーと
 私が修士、博士まで研究に取り組んでいこうと思えたのは、今井教授に出会えたこと、その下でやりがいのある研究テーマについて学部生のうちから任せて頂けたことが大きいと思います。この研究は大きな研究テーマであり、長期的スパンでの計画が必要ですし、この機序が解明できれば、多くの人の助けになるのではないかと思っていて、その点でもやりがいを感じています。また、大きなことにじっくりと取り組み、成し遂げることができたら、自分の人生の大きな財産になると思い、うまくいく保証はないけれど、このように取り組めている今を大切にして、この道を進んで行こうと思います。

最後に、研究者を目指す学生にメッセージをお願いします。

 受験では勉強に対してマイナスのイメージが付きがちですが、何のために勉強しているか、ずれてしまわない方が良いかなと思います。テストの点数という意味では私は大きなことは言えませんが、勉強の本当の意味が大学に入ってから分かりました。勉強、ひいては学ぶことは自分の夢や目標につながる大切な過程であるし、本来学ぶことは楽しいことだと思います。入試に合格するという目的を達成するためには受験の勉強法に浸ってみることも良いと思います。ですが、大学に入学してからが本当のスタートです。自学を中心とした本当の勉強が始まります。それを心に留めておいて欲しいと思います。

 また、木の枝を広げるようにいろんなことに興味を向けてみてください。枝さえ広げておけば必要なときに葉や実を付けることができます。様々な人との出会いが自分の視野を広げてくれます。自分だけの狭い視野の中でこれしかないと決めてしまわずに、多角的に物事を捉えて自分と向きあった上で、進んでいって欲しいです。研究者を目指そうと思う皆さんはきっと旺盛に好奇心を広げることができると思います。

 それから、思考する力というのは研究者にとって大切なスキルだと思います。発想の新たな切り口を与えてくれる人や、独創的な思考展開をできる人など、刺激のある人と接することで思考力は養われていくと思います。興味があること、人など積極的に飛び込んでいき思考力を鍛えてください。
 
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