在学生の声

在学生の声

深めたい専門はひとつでなくても良いと思う。
多くの分野で、その専門性を高めることができるなら、
それがオリジナリティになると思う。


令和4年度 生命科学科4年 大谷 悠喜さん

本学科を選んだ理由を教えてください。

 この学科を選んだ理由はたくさんあるのですが、生物が好きだったというのが一番シンプルな理由です。僕は生物でも植物にはあまり興味がわかず、ヒトに興味がありました。ヒトを学ぶことは自分を知ることでもあり、それも面白いと思いました。ヒトについて学ぶということは医学部になるのかもしれませんが、臨床医になりたいとは全く思っていませんでした。それと同時に情報系の学科にも興味を惹かれていて、受験の最後まで生物か情報かどちらの学部を選ぼうか迷い、結局両方の学部を受験しました。
最終的に、生物系の学科に進学したのは、医学や生物系の学問は大学でないと出来ないと思ったのが大きな理由です。情報の分野は学びたいと思った時は、最悪パソコンさえあれば独学でも学べるのではないかとも思っていました。僕はこの時にはすでに、専門は一つに限ったことではなく、どちらかを諦める必要はないという考え方をしていました。

受験勉強は大変でしたか

 僕は国語があまり得意でなく、それが足を引っ張って一度目の受験では合格することができませんでした。現代文はそこそこなのですが、古文、漢文がとにかく出来なかったです。例えれば、鉛筆を転がして回答したのと同レベルです。一年浪人したにもかかわらず大きな改善もみられなかったので、苦手科目の克服方法などをお伝えするのは難しいです。ぜひその道のプロに聞いてください。得意な科目についても、僕にとっては「好きな科目=得意な科目」なので、自然と勉強しますし、自ずと点数にも結び付いていきました。苦手科目を少しでも「いいな」って思えるようになれば、もうこちらのものです。受験生へのアドバイスとして唯一言えるとしたら、ポジティブでいることだと思います。国立大学の場合、共通試験の科目も多く、勉強も大変だと思います。しかし、逆に科目が多いからこそリスク分散も出来るとも言えます。また、苦手科目があったとしても、「九十点を百点にするよりは、三十点を五十点にする方が楽。」だと、伸びしろの方に目を向けると、苦手科目に対しても取り組みやすくなるかと思います。

 英語が足を引っ張ることにはならなかったのですが、英単語の記憶の時には接頭語と接尾語を意識するようにして覚えていました。分解して単語の成り立ちの意味を意識して覚える方法が、理解しやすくて、僕に合っていました。自分がやりやすい勉強法を受験勉強で練習しておくことは大学での勉強に役立つものだと思います。

入学してからの学習について教えてください。

  九州大学では、入学してからの一年間、伊都キャンパスで基幹教育を学びます。第二外国語を履修した時に、「なんか大学生らしい。」と感じました。僕はスペイン語を話せる祖母の影響もあってか、スペイン語を選びました。大学でラテン語系のスペイン語に馴染みを作っておくことで、将来にフランス語などを学びたいと思った時にも下地が出来て、学びやすいと思ったことも選んだ理由です。

 他にも、基幹教育で印象的だった科目は、課題協学です。この科目では、学部を問わずランダムに班に振り分けられて、課題に取り組みます。講師の先生もいろんな学部からかわるがわるやって来て、各専門分野の視点から組まれた課題にチームとして取り組みました。その中でも面白かったのは、答えた質問により計算された結果によって、結果を導くというものでした。例えば、『昼食に何が食べたいか』という答え出すために、『朝食に何を食べた?』など5~7くらいの質問に答えます。この質問の結果をもとに自分たちで作った数式に入れてその出力を解釈する。という事をしました。僕の場合は自分が思っていた答えと、計算で出された答えがことごとく違っていました。それまで自分の事を、わりと論理的な方だと思っていたのですが、実はその時の気分によって動いてきたのかもと、自分の意外性も知れたのが面白かったです。

 基幹教育科目は、いわゆる一般教養科目のようなものですが、もしかしたらこの先一生学ばないかもしれない学問分野について学んでおくのはいいと思います。その分野の初歩だけでも学ぶことで、将来また学びたいと思った時に抵抗感なく入っていけると思います。様々なことの抵抗感をなくすことは自分の間口を広げることにつながると思います。アルバイトや課外授業などに勤しむのも良いのですが、学べる機会にやってみるのもいいと思いますよ。何より大学の授業は何教科受講しても授業料は変わらないのですから。

はじめて研究室の門を叩いたときのことを教えてください

  はじめて研究室に入らせてもらったのは、一年生の時に生体防御医学研究所 分子医科学分野の中山教授の分子生物学勉強会への参加です。この勉強会は中山研以外の学部生や大学院生も参加する勉強会で、中山教授の意向で、お互いの考えが分かる距離感に重きをおくために、小部屋で開催する少人数制の勉強会でした。僕は分子生物学にあまり興味を持っていなかったのですが、勉強会の評判から、「そんなに面白いなら行ってやろう!」という勢いで参加しました。でもその勢いも空しく、全くわからなかったです。テキストは毎年同じ、「ワトソン・組換えDNAの分子生物学」が使用されていて、ランダムに回ってきた順番でテキストの説明をするのですが、僕はところどころわかるものの、「理解できた、深まった。」などとは言い難かったです。それでも中山教授がテキストの内容から広げて話される余談が面白くて通っていました。「この内容は、二年で生理学、生化学をやってからの方が面白いと思うよ。」と言われてこともあり、三年生になって、再び参加することにしました。三年の時は一年の時とは違い、心から面白いと思いました。このテキストは分子生物学の黎明期に行われていた実験手法などについても取り上げられているのですが、今、最先端と言われている実験手法も根本的には昔と変わらないことも理解しました。先端技術の変化は激しいですが根っこは同じです、つまり変わりません。最先端が何かと取り上げられる分野だと思いますが古典的手法も大切にしたいと思わせてくれました。僕にとっては一年生の時に打ちのめされた経験があったから、二年生の基礎医学研究も前向きに取り組めたこともこの勉強会に参加させて頂いた収穫のひとつでした。

僕の学年は二年生の時からCOVID-19の影響で、オンライン授業となりましたが、その時にも、オンラインで行われていた疾患情報医学分野の今井教授の輪読会に参加しました。こちらは神経の研究であり、分子生物学とはまた違った興味深さがありました。

研究室配属について教えてください。

  二年生の二月くらいに、再び中山教授の研究室へ伺うようになったのですが、その流れで三年生の基礎研究室配属も中山教授の研究室でお世話になりました。主にウェット、いわゆる実験をさせて頂いて、基礎研究室配属は四週間ですが、実験の区切りの良いところまでと思い、その後も延長して追加で三週間通わせて頂きました。

 後期の研究室配属は、四か月間の期間が設けられていて、一ヶ月毎に配属先研究室を選ぶことができるのですが、僕はたくさんの研究室を回るよりは、じっくりと腰を据えて、学べることを身に着けたいと思い、生体防御医学研究所 統合オミクス分野 久保田教授の研究室で全期間お世話になりました。この研究室を選んだのは、僕はかねてからドライとウェット両方ができるようになりたいと思っていて、中山研でウェットに取り組み、次はドライ系研究に触れてみたかったからです。久保田研では、糖代謝などの研究を行っているのですが、研究テーマに沿って研究を行うというよりは、実験で得られたものを解析してまとめたものを報告することの反復を行うことで学ばせて頂きました。卒業研究は、生医研 トランスクリプトミクス分野 大川教授の研究室でお世話になりました。こちらの研究室を選んだのは、研究室の中に数理情報系の先生がいたからです。

  僕はいくつかの研究室でお世話になりましたが、それぞれで自分が学びたいと思っていたことが学べて、とても有意義でした。この病院キャンパスには数多くの研究室があって、行ける研究室がたくさんある。他の大学と比較することはできませんが、相当恵まれた環境ではないかと思います。

これからの進路について教えてください。

  修士に進学します。修士での研究室は、中山研究室でご縁のあった東京医科歯科大学の清水先生の研究室に進学します。清水先生は僕が中山研究室に通い始めてからすぐに留学されたため、同じ空間で一緒に過ごした期間はほんの一ヶ月くらいですが、留学されてからあまり時間をおかず、自分のラボを主宰するため、日本に戻ってこられました。先生の研究室では、数理情報学・AIをツールとして使用して生命科学の研究を行っています。それは、僕が思っている複数の専門性を持つことであり、その点に惹かれて清水先生の研究室への進学を希望しました。思い返せばあの時の中山先生の教授室での出会いが僕にとってのターニングポイントになったのだと実感しています。
 
 このように複数の専門を持つことに僕がこだわるのは、高校生のときに他大学のオープンキャンパスで聞いた言葉に根付いています。その言葉は、「二足のわらじを持て」ということです。要するに複数の専門を持て。というこことです
 今、僕は生命医科学の専門性を高めながら、情報や数学の分野の専門も高めたいと思っています。それは、AIの技術や数理など、情報学・数学のアプトプット先のひとつに生命科学があると思っていることも動機の一つです。生命医科学研究を行っている人の中で、情報のツールを使うことが出来る人はいても、ツールが作れる人は少ないのではないかと思います。だからこそ、僕はそこを目指したいと思います。そのためには数学や統計について学ぶ必要があります。そしてその二つに限らず、他にも取り入れたい分野を見つけ、それぞれ専門性を高めながら融合していくことが出来るなら、それは僕のオリジナリティになるのだと思います。それために、大学の四年では足りなかったし、修士の二年でどうにかなるものではないとも思っています。博士まで進学して僕の目指す形を模索したいと思います。

最後に生命科学科を目指す学生さんにメッセージをお願いします。

  受験勉強に一生懸命取り組んでいる人も多いと思います。大学に入学してからも目の前に勉強、例えば医学だけを黙々と取り組むのは実はもったいないことじゃないかなと僕は思います。一般教養もそうですし、別のことでも、いろんなことを知っておくことで、違った視点から物事を観察出来たり、事象の成り立ちの理由を理解出来たりと、友人たちと遊ぶ楽しさなどとは違った、「楽しさ」を知ることが出来ます。
  受験勉強をやる中で、「あの科目は捨てた。」という人もいます。僕の浪人時代の予備校の講師の、「それは捨てたのではなく、あなたが捨てられたのだよ。」という言葉は印象的でした。捨てられることなく、少しでもいいから自分のものにすることで、後々、大きな「楽しさ」を与えてくれるツールになると思います。
  大学に入ってからは、たくさんの事にチャレンジしてみてください。やらないといけない事に囲まれて、キャパオーバーだと感じることもあるかもしれません。完璧にやりすぎない、忙しい気にならない、ため込まない。頭で考えてパンクしそうになるなら、やることを紙に書いてみる。そうすることで実はそんなにたくさんはないことに気付けると思います。注意点は、効率主義になりすぎて本末転倒にならないようにすることです。僕は誇れるほどの成績ではありませんでしたが、試験はひとつも落とさずにきました。でも試験をパスするための勉強をしたつもりはなく、研究などで使うときには思い出せるように頭に収納しています。やればいいことではなく、何を大事にこなしていくかを判断できるようにするのも大学生で養った方が良いことだと個人的に思っています。
 
 最後に、大学に入学すると、同じく一所懸命に受験に取り組んできた人たちと、友人や仲間になることができます。僕は感じたことですが、そういう人は、考えていることが深かったり、面白かったり、様々な刺激がもらえます。こんなコミュニティに身を置く経験も大学の醍醐味だと思います。ぜひ、周りを巻き込みながら、自分が楽しいと思えることを大学でいろいろやってみてください。
 
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