在学生の声

在学生の声

自分の中のぶれないものを大事にしながら、
先入観にとらわれることなく可能性を広げて


令和2年度 生命科学科4年 園田 大輝さん

研究者を目指したきっかけを教えてください。

 僕は研究者を目指そうと思って入学してきたのではないので、目指したきっかけというのは明確ではありません。大学の学部を探すうちにこの学科を知り、研究者に興味を持ちだしたのがきっかけといえばきっかけです。
 
 大学へ進学しようとは思っていましたが、将来「これになろう。」という希望は持っておらず、受験する学部も決めかねていました。高校3年生の夏になっていよいよ志望学部を決めないといけないという時期に、高校の先生が「将来何になりたいかではなく、大学で何を学びたいかで選んでみたら。」とアドバイスをくれました。それでいくと、海洋系や生物系が学べるところがいいと思って学部を探して、ホームページ経由でこの学科を知りました。生物系というと理学部などの方が当てはまるのかもしれませんが、当時、iPS細胞の研究が盛んに報道されていて、新しい発見に一番近いところにいる研究者という職業に魅力を感じましたし、医学科の学生と一緒に医学を学べることもいいと思いました。加えて、医学研究は人々にわかりやすく役に立つ研究である点も大きかったです。そしてこの学科では、早期研究室配属など、学部生の早い段階で研究体験ができるカリキュラムが用意されていて、この学科で学びたいと思って受験しました。
 

受験勉強は大変でしたか。

 結構大変でした。今考えれば「よく頑張ってたな。」と思います。
 
 志望校を決まられないまま、成績を伸ばすこと、維持することには努めていました。僕は熊本出身なんですが、高校3年生のときにちょうど熊本地震があって、その後2ヵ月間、登校ができませんでした。その間も時間を大切に自宅でコツコツと積み上げた結果が今につながってるじゃないかなとは思います。
 
 僕の高校でよく言われていたのが、「まず得意科目を徹底的に伸ばす、そうすることで徐々に苦手科目が伸びてくる。」ということでした。これは出来ないことを気にするよりまず出来ていることを喜ぶというポジティブな勉強方法です。得意科目が目に見える形で伸び切るとそれが強みになるので、気持ちに余裕を持って苦手科目に取り組むことで出来るようになります。僕は数学が得意で、国語や英語が苦手だったのですが、その方法を実践したのも良かったのかもしれません。
 

入学してからの学習はどうでしたか。 

 医学科目の中で大変だったと思うのは、神経解剖学です。とにかく内容が濃くて記憶力を試すように覚えることが膨大で苦労しました。生命科学科の同期や部活で一緒だった医学科の友人などが「こう覚えたら覚えやすいよ。」というようなアドバイスをくれて、なんとか乗り切りました。
 
 研究を始めるようになり、全体的にどの講義も「もっとよく受講していれば良かった。」というような気持ちにはなったのですが、その中でもバイオインフォマティックスの講義は特にそう思います。バイオインフォマティクスは生命科学と情報科学の融合分野で、DNAなどの情報を解析して解き明かすような学問です。後に僕はこの分野の研究への興味が高まるようになり、特にこの科目の意義を感じました
 

授業外で印象的だったことを教えてください。

雪の白川郷
雪の白川郷
 僕は両親からも「大学時代にしか出来ない経験を大切に」と言われていましたので、入学前から「大学生らしい活動」に重きを置いて入学してきました。大学生になるとそれまでより格段に行動範囲が広がります。自動車免許を取得するのもそうですし、アルバイトをして自分のお金で飛行機、新幹線のチケットを買うこともできるようになります。この学科は厳しくて、単位をひとつでも落とすと留年ですが、ポイントを押さえて必要なことをやることで、自由な時間を持つことはできます。それで僕は日本のいろんなところを旅しました。その中で印象的だったのは白川郷です。雪の景色が見たくて2月に行ったのですが、それまで雪が降っていなかったのに、到着直後から降り出して4時間後にはまったくの別景色になっていました。まさに写真で見るその景色を間近で見ることができて感動的でした。
 
部活のみんなと
部活のみんなと
 部活は医学部のバドミントン部に所属していました。サークル、部活も「大学時代にしか出来ない経験」なので、絶対に入ろうと思っていました。高校では部活はやっていなかったのですが、運動が出来た方がいいと思って、入学時のオリエンテーションの勧誘で入部しました。大会で輝かしい成績を残すというまではいきませんでしたが、大会を楽しめる程度には着々と上達して、医学科など学科外の友人もできて一緒に旅するようにもなり充実した生活になりました。
 
  医学部の部活は練習の頻度の週に数回であるところが多いようで、バドミントン部は週2回でした。ちゃんと上達するペースですし、研究や勉強、アルバイトも両立できる頻度だと思うので、何か興味があるものがあったら入部をおすすめします。
 

究を始めてみた感想を教えてください。

ドライ研究
ドライ研究
 僕は今、細菌学分野の林哲也教授の研究室でドライ研究を行っています。ドライ研究とは、主にコンピューターを使って解析を行う研究です。大学に入学する前はこのような研究を行うとは思っていませんでした。3年生の前期の早期研究室配属で1か月間は別の研究室に配属して頂き、ES細胞などを対象にいわゆるウェットの研究を体験しました。もともとiPS細胞から研究に興味があった事もあり、やりたい研究に近い研究を出来た嬉しさもあり、意欲的に取り組むことができました。後期の後期研究室配属も継続して同じ研究室に配属して頂いたのですが、ドライ研究も体験してみたいと思い、後期研究室配属の後半にドライ研究をやっていると聞いていた細菌学分野へ配属して頂きました。体験して初めて分かったのですが、ドライ研究はとても奥深く、いうなればディープでした。研究室で採取した細菌の遺伝子情報を対象にパソコンで解析を行っていくのですが、個々のサンプルのデータ自体も膨大であり、もちろんサンプルも多数あります。その膨大のデータは解析のアプローチを変えることによって、様々なことを教えてくれます。もちろん容易なことではありませんが、データからわかることの可能性の大きさに惹かれ、このドライ研究の分野をとても面白いと思い、そのまま卒業研究、その後の修士まで林哲也教授にお世話になりたいと思いました。
 

今されている研究について教えてください。

 僕はヒトの体にいる常駐菌の病原性について研究を進めています。皮膚表面や腸内など、僕たちの体には様々な常駐菌がいます。常駐菌に害があるわけではないのでヒトは健康でいるのですが、時として病原性を持つものが発生して病気を引き起こします。僕の研究テーマは常駐菌のうち、病原性があるものとないものの解析を行って比較し、その違いから病気を引き起こす因子を明らかにすることです。ドライ研究、ウェット研究と話してきましたが、ドライ研究でも菌からの解析データの採取を行う時はウェットを行うこともありますし、ウェット研究においても実験結果の解析のときはドライとなります。この研究テーマは、卒研の研究テーマを決めるときに林教授に「ドライ研究に興味はあるけど、ウェットもやりたいと思っています。」という率直な希望を伝え、林教授が「この研究は、ゆくゆくはウェットが必要になるから。」と提案してくださった研究テーマです。

卒業論文発表会
卒業論文発表会
 研究は実験方法のプランニングを行い、実験、結果の考察、検証といった過程を繰り返し、結論まで導くものですが、ドライ研究では、様々なデータ解析方法を試し、研究を進めていきます。そのアプローチ方法が研究者の力量であるようにも思います。もともと発想力のある方は独創的なことを思いつくのかもしれませんが、僕は過去の論文をたくさん読むなどの勉強して、知識の補完を行い、思考力を高めていくことに尽きると感じています。卒研で鍛えて頂き、研究を知らなかったときよりは力はついたと思いますが、まだまだ勉強していく必要があると実感しています。
 

これからの進路を教えてください。

 修士課程へ進学しようと思います。修士卒業後は一度就職してから自分の視野を広げてから将来を決めようと思っています。
   修士までの進学を決めた理由で一番大きいのは、卒業研究からこの研究にやりがいと感じ、卒業研究の1年と修士の2年はこの研究に取り組みたいたいと思ったことです。欲を言えばこの研究で論文を出したいと思っています。その他の理由は、将来、基礎医学研究者としての進路を希望したときに備えて、修士までで研究者としての基盤を整えてから博士課程から再スタートを切れるようにしたいと思ったことです。僕の性格なのかもしれませんが、可能性を一つに絞ることを良いとは思えません。「世の中自分の知らないことしかない。」と言っても過言ではないくらいに自分が知らないことであふれていると思います。自分の興味に忠実にその時にいいと思う方に進むことで、思ってもいなかったことに出会える。これは高校の時には研究者になろうという強い意志はなかった僕が、この学科でドライ研究に出会えたことで自信を持って言えます。そしてこのドライ研究は、様々な産業へ行ける橋渡しをしてくれるものだと思います。それはマーケティングなど、情報の解析は、文系分野の産業にも必要なことであるからです。入学前は医療、医学、生物学といった理系分野、もしくは研究者になど、将来進む産業が狭まるのかと思っていましたが、僕はこの学科で学びドライ研究を知ったことで将来の間口が広がったと感じています。
 

研究者を目指す学生にメッセージをお願いします。

 この学科を卒業する僕がいうのも恐縮なのですが、この学科に興味を持っている時点でその方は「他の人と違うことを出来ている。」と自信を持っていいと思います。何か違う発想が持てているというのか、すごいことをしていると思います。それでこの学科に来たいと思ったら、自分の中のぶれないものを大事にして欲しいです。そして高校生の時に持った考えなどの先入観にとらわれないで欲しいとも思います。このふたつは矛盾しているようですが、高校生の時に思ったこと、決めたことと、その後、様々な人と出会って多くの経験した後で考えて選ぶ答えは同じになるとは思いません。柔軟にその時に選びたいと思ったことに従って欲しいです。僕の場合は、「決められないなら自分の興味や好きなことを優先する。」ということだけをぶれないようにして、その上で経験したからこそいろんなことを選ぶことが出来たと思います。僕もこれからも積極的に知らなかったことに出会い、体験してから決めていきたいと思います。

 それから、2年生など早い段階で研究室を訪問することをお勧めしたいです。3年生の研究室配属で、前期、後期で最大5か所の研究室は経験できるのですが、医学部には多くの研究室があり多様な研究を行っています。医学部の研究室の先生はこの学科について理解していて、学部学生も温かく迎えてくださるので、積極的に訪問して自分がやりたいと思う研究に出会って欲しいと思います。

 そして、「大学生らしいこと」もたくさんやって、楽しんでください。勉強はやらないといけなし、単位は落とせませんが、工夫次第で時間は出来ます。研究室訪問でも旅行でも部活でもアルバイトでも、全てが自分の視野を広げてくれることにつながります。世界を広げて選択肢を増やして欲しいと思います。
 
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