在学生の声

在学生の声

色々なことにチャレンジして、
視野を広げ、新しい世界を見つけてほしい


令和6年度 生命科学科4年 中村 朱里さん

本学科は、全国でも珍しい医学部に設置された生命科学科です。本学科を選んだのには決め手があったのでしょうか。

母が看護師で、小さい頃から人体や病気の仕組みに興味があり、医療に関する番組やニュースを見ては母に質問したりしていました。そのときから、将来は医療関係の仕事に就きたいと漠然と思っていました。

大学進学に際し、はじめは医学科に入ろうと考えていたのですが、自身の興味がずっと体の仕組みや病気のメカニズムにあったことや、共通テストの成績などを総合的に考慮して、医学科と同じ授業が受けられる九州大学の医学部生命科学科を選びました。

受験勉強は大変でしたか。

明確な目標に向かってずっと勉強していたので、楽しかったという気持ちが一番大きいです。私はいわゆる理系の人間で、数学や理科が好きで、反対に国語や英語、社会は本当に苦手でした。好きなことはいくらでも続けられるし、掘り下げていくことができるので、好きな科目はかなりやりこみましたが、全体のバランスはあまりよくなかったかもしれません。

入学してみて、大学での勉強に対してどのような印象を持ちましたか。

1年次は伊都キャンパスで基幹教育科目と呼ばれる、専門課程の基礎となる科目や全学共通の教養科目などを学びます。一番印象に残っているのはスペイン語です。スペイン語がまったくわからない状態で授業を受けたのですが、発音や表記などが英語とは大きく違っていて、面白かったです。外国語といえば英語しか知らず、文系科目が苦手だった私ですが、自分の世界が少し広がったように感じました。

2、3年次は医学科とほぼ同一のカリキュラムを受講します。試験がかなり詰め込まれていて、ひたすら覚えるばかりで、はじめは圧倒されましたが、自分が知りたいことを学べるということと、受験生のころに培った忍耐力のおかげで、全体としてはそこまで苦労せずに学んでいくことができました。ただ、そこでも持ち前の性分が出てしまい、自分の興味がある生理学や神経解剖学などは楽しんで勉強できたのですが、あまり興味が持てない科目の勉強は取り組むのが大変なこともありました。

医学科と同じカリキュラムで学んだということは研究の上でも役に立っていると思っています。研究室に入ったあとで、生理学だったり、免疫学だったり、一度学んだことを学び直さないといけないときが来るのですが、医学科と同じ授業で人間科学について網羅的に学んでおいたことで、ある知識を体系的に位置づけながら理解することができます。

生命科学科はどのような雰囲気なのでしょうか。

少人数制(定員12名)なのでとても仲がよく、ずっと交流が続いています。一緒に遊びに行くこともあります。また、同級生だけでなく縦の繋がりもあります。懇親会があったり、研究室を訪問した時に先輩がいたりして、相談をしたり、経験談を聞くことができたりして心強いです。研究の世界でも人との繋がりはとても重要なので、生命科学科はその点でも魅力的な環境だと思います。

研究はどのように始まるのでしょうか。

いきなり研究が始まるのではなく、早期研究室配属といって、3年次に希望する研究室に短期間在籍し、研究チームの一員として働くプログラムがあります。私ははじめ、研究するなら、がん系か神経系かのどちらかがいいと思っていたのですが、早期研究室配属で神野尚三教授の主宰する神経解剖学分野に行ってみたら、研究内容にすごく興味を引かれ、雰囲気もよかったので、4年次も神経解剖学分野にお世話になり、卒業研究を行いました。

研究室はどのような雰囲気なのでしょうか。


卒業式後、研究室にて神野教授と

かなり仲がいいです。先生方や先輩方も面倒見がよく、コミュニケーションが活発です。歓迎会をしてくれたり、みんなでピザパーティーをしたりと、研究以外のイベントもあります。男女比は半々くらいで、留学生も3名います。

実は入学後、医学科に入り直そうかと考えたこともあったのですが、神野研究室で研究の楽しさを知り、また、「自分のやりたかったことはこれだ」と思えるものに出会うことができて、本当によかったと思っています。

中村さんの研究内容について教えてください。

心的外傷後ストレス障害 (PTSD) という精神疾患のメカニズムについて研究をしています。PTSDの症状の一つに、特定の状況に対して形成された恐怖が、類似した他の状況でも生じてしまう「恐怖記憶の汎化」というものがあります。卒業研究として、ペリニューロナルネットという脳内の構造物やミクログリアという中枢神経系に存在する細胞の働きが、恐怖記憶の汎化にどのように寄与しているのか、PTSDマウスを用いて調べました。

私は和歌山県で生まれ育ったのですが、和歌山を含む太平洋側の地域では、南海トラフ地震に対する危機感のようなものが結構あります。報道や掲示物、例えば電車内にも災害への注意喚起があって、日常的にそういったことを意識する機会が多いんですが、PTSDはそういった災害のあとにも生じる、実は多くの人に起こりうる精神疾患です。それがどのように起こるのか神経レベルで明らかにできれば、新たな治療法の確立など、臨床への応用も見えてきます。

研究は大変そうなイメージがありますが。

私が実際に研究に取り組んでみて感じたのは、進展を得るためには想像していたよりもずっと時間がかかるのだな、ということです。1か月休まずやってようやく少し進捗が得られるような感じです。仮説を立て、それを実験によって実証するというのが科学研究の基本的なプロセスですが、実験ひとつ取ってもすごく時間がかかります。PTSDのモデルマウスを作るのにも1か月近くかかりますし、それで遺伝子の変動などの仮説を裏付けるデータが取れなければ、また仮説を立てるところからやり直さないといけません。それでも、遺伝子や細胞の変動が見られ、研究が進捗したときには、他では得られない達成感があり、本当に面白いです。

また、研究を行ううえでは、論理的な思考力、論文を書く文章構成力、英語力など、一般に文系といわれるような能力も絶対に必要です。まだまだ苦手な部分なので、これからも勉強していかないといけないなと思っています。

学位論文を書くのは苦労しましたか。

私の場合はそこまで大きな苦労はありませんでした。研究室で学会に参加させてもらって、ポスター発表や口頭発表を行うという経験が何度かあったので、そこからのステップとして論文を執筆することができたというのが大きかったです。

学業以外の活動についても教えてください。

大学生になったら様々なことにチャレンジして、視野を広げて、新しいことを見つけたいという気持ちがあったので、アルバイトは色々と経験しました。塾の講師、飲食店、あとは、学校の図書館。接客が楽しいです。ラーメン屋で働いたときは、お客さんと関わることはもちろん、40、50代の方や、外国籍の方など、バックグラウンドを異にする人たちと一緒に働けて、いろいろな人と関われるというのが自分の性格に合っていました。

また、友人とピックルボールのサークルを作って、病院キャンパスで毎週活動しています。ピックルボールはテニスに似た球技なのですが、ルールがシンプルで運動量も激しいものではないので、老若男女問わず誰でも簡単に始められるのが特徴です。もともとは学外のピックルボールクラブに参加していたのですが、幅広い年齢層の方が参加しているのが面白く、学内でもサークルを立ち上げました。学生だけでなく、先生や職員の方にも参加してもらいたいという想いで活動し、参加者も広く募っています。

  • ピックルボールの活動風景

  • ピックルボールの活動風景

これからの進路について教えてください。

研究室に恵まれたので、修士課程も同じ神野研究室(神経解剖学分野)に行こうと思っています。修士課程の間に論文が出せるぐらいには頑張りたいです。その後、博士課程に進むか就職するかはまだ決めかねていますが、研究者になるのもいいな、と思っています。今は研究を志す若い人への支援も比較的充実してきており、例えば海外でポストドクターをするなど、キャリアパスの様々な可能性自体は開かれているように思います。生命科学科の卒業生で、本学に職を得ている先輩方もいらっしゃいます。

最後に、生命科学研究の道を目指す方にメッセージをください。

私ははじめからやりたいことやその道筋が決まっていたのではなく、九州大学の生命科学科で新しい人と出会い、様々な経験をして、その中で自分がやりたいことを見つけてきました。

私のこれまでを振り返ってみて、やってきてよかったと思うのは、色々なことにチャレンジしてきたということです。たとえ、自分の興味があるものはこれだというものを持っているとしても、何か新しいことに挑戦してみることで、思いがけない新しい発見があったり、そこから生まれていく人との繋がりがあったりするものです。視野を広く持って、いろんなことに興味を持って、チャレンジしてほしいと思います。

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