今を輝く女性研究者の横顔

Seimeiちゃんが、今を輝く女性研究者にお話を聞いてみました。

聞き手
Seimeiちゃん。生命科学科在学中の匿名キャラ。
見た目は女の子だが、中の人は男子学生であったり、なかったり。
輝く女性研究者
生体防御医学研究所 炎症制御学分野 池田 史代 教授
WEBSITE みらいぶっく 若手研究が世界を変える! JCB

池田先生は大阪大学歯学部ご出身ですが、学生時代はどのように過ごされましたか?

学生時代は、全学の体育会水泳部に所属し、そのトレーニングに時間を割いており、プライベートでも部活の友人と過ごす時間が多かったように思います。人とかかわる仕事をしたいという思いから、歯科医師になるつもりで入学しましたが、4年生時に研究室訪問した際、研究に興味を持ち、漠然と研究者への道も考え始めました。入学当初から、周囲に「研究者には絶対なりたくない」と漏らしていたため、このような考えに至ったのは自分でも意外でした。5・6年生で行う臨床実習を経て、自分には臨床よりも研究の方が向いているという気持ちがますます強くなりました。歯科医師免許を取得し、大学院進学後は、歯科医のバイトをこなしつつ研究室に通い、生化学の研究を進めました。研究は「知識を得る→考える→試す」というプロセスの積み重ねであり、また、一つの考えに縛られず人によって多種多様な考え方ができます。博士課程での研究生活を通じて、これが自分の性格に合致していると再確認し、研究者として歩むことを決めました。

中学・高校時代の経験で、現在に通ずるものはありますか?

高校生の頃から、国際的なチームで仕事をしたいという目標がありました。きっかけは、高校1年生の時、両親に勧められた交換留学プログラムでアメリカに1年間滞在したことです。まず、これに参加するために中学校在学中、交換留学参加資格を得るためのプログラムの試験を受けました。試験合格後、アメリカに飛び立つ事前準備として、現地の文化や習慣を学んでいたのですが、実際に訪れると、それまで抱いていたイメージとはかなりかけ離れていることに衝撃を受けると同時に、情報や知識だけが頭に入っていても、身をもって体験しないと分からないことが多いと痛感しました。また、日本を飛び出したことで、かえって日本の良さにも気づけたのだと思います。このような経験から、今は日本に研究室を構えており、また、行動を起こすことに躊躇がなくなったため、国際チームを組んだほうが良い場合は積極的に海外の研究チームとコンタクトをとろうとする姿勢が培われました。

アカデミアに残って、大変だったことは何ですか?

やはり、安定していないということです。しかし、歯科医として働いていたとしても、どんな職業にもそれなりの大変さがあると思います。大切なのは、自分の好きなこと、興味があることを究めたい、わからないことを自分の手で明らかにしたいという気持ちです。そして、環境は自分の選択・努力次第で変えることができます。「何とかする!」という気持ちがあなたを後押ししてくれるはずです。

今後の目標を教えてください。

「日本で“強い”チームを作ること」です。私は以前、ドイツのゲーテ大学やオーストリアのIMBA(分子バイオテクノロジー研究所)で研究活動を行ってきました。海外には、複数の研究チームで共用できる機器があったり、それらの機器のエキスパートがいて彼らからアドバイスをもらえたりするなど、日本では経験できないことも多くあります。確かに海外での研究環境も素晴らしいものですが、高校時代、そしてポスドク時代の海外渡航経験を通じて、日本の良さを再認識し、この国で研究室を構えることにしました。また、“強い”というのは、チームワークが固いということです。研究では、個人で成果を上げることに注力しがちですが、プロジェクトを成し遂げるには強いチームワークが不可欠です。そのため、仲間との連携を強化しながら、次世代の育成にも力を入れていきたいと考えています。

最後に、将来の女性研究者に向けてメッセージをお願いします。

女性は、研究者に向いていると思います。コツコツと細かい作業もこなしながら、仲間とうまくコミュニケーションをとって互いをサポートできるという器用さは、チームワークに欠かせないものであり、女性の強みでもあります。研究に興味を持ったら、ぜひ、研究室に足を運んでみてください。

聞き手
おなじみ Seimeiちゃん
輝く女性研究者
後藤侑奈さん(7期生)
所属:九州大学大学院システム生命科学府
システム生命科学専攻(博士課程) 細胞工学研究室

修士課程卒業後、企業への就職という道もありますが、博士課程(アカデミックな方面)に進んだ理由は何でしょうか?

大学院に入った当初は博士課程に進むつもりはなく、修士後は福岡県内で働きたいと考えていました。しかし、ピンとくる企業がなく、結婚した場合の子育てや相手の転勤等で辞める可能性も頭によぎり、なかなか就活に身が入りませんでした。 そんな時、研究者は『大学はどこにでもあるから、結婚相手がどこに転勤になっても自分には就職先がある。勤務形態がフレックスで子育てしやすい』という職業であることにふと気づきました。当時は、このメリットがかなり魅力的に感じたため急遽、博士進学に切り替えました。(今思えば、かなり甘くて無謀な決断だったと反省しています…)

修士課程から博士課程に進学される際、親御さんからの反対等はありませんでしたか?ありましたら、どのように説得なさいましたか?

両親ともに、将来何があるかわからないので、特に女性は手に職をつけた方がいい、という考えだったので大きな反対はありませんでした。ただ、金銭面でかなり負担をかけてしまっているのが申し訳ないです。

アカデミアに残ってどういったことが大変だと感じますか?

Q1で回答した内容と矛盾してしまうのですが、自由度がとても高いことです。生活や仕事内容も、(1人前になれば)何をテーマに研究するかというところから、どういう風に進めて結果にするかまで、すべて自分で決められます。何をやってもいいけど、結果はすべて自己責任、お手本ももちろんない、そして何より能動的にならなければ何も始まらない。書いてみれば当たり前のことなのですが、恥ずかしながら今までこのような経験をほとんどしたことがなかったため、大変だなと感じました。

結婚・出産について今後の展望や研究生活との両立などを教えてください。

出来れば家庭を持ちたいので、研究に必要な能力はもちろんですが、プラス両立に必要な能力を今のうちにつけていかなければと焦っています。例えば、私は実験で夜遅くなることが多々あるのですが、家庭を持てばそんなことはできません。ついつい目の前にある実験を始めてしまいがちですが、無駄なことをしていないか?先にやるべきことはないか?など立ち止まって考える習慣をつけているところです。

研究者として今後の目標を教えてください。

今の専門は細胞生物学で、ほとんどの分野に繋がるような基礎的な学問です。このbackgroundを持って他の分野、例えば臨床寄りの研究をやるのも面白そうだなと考えています。 胸を張って他分野に行けるように今の専門を深く理解し、技術を身につけるのが今の目標です。

最後に、将来の女性研究者に向けてメッセージをお願いします。

自分のキャリア、家庭、子育てなど何を1番に優先したいかは人それぞれ価値観が違うと思います。女性は特に、置かれた環境によってはかなり悩むことになると思いますし、不本意な選択をせざるを得ないときがあるかもしれません。そうならないために、また仮にそうなったとしても前向きに進めるように、今のうちから準備していけたらいいのではと思います。私も頑張ります!